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ベンチャーピッチ×アスキー

新しい服が買わなくてもどんどん届く「エアークローゼット」のビジネスモデル=モーニングピッチ

2014年12月06日 07時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/大江戸スタートアップ

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注目スタートアップのビジネスモデルを分かりやすく紹介。ノイエジークはスタイリストが選んだ服を月額制で宅配、何度でも試着・返送できるファッションレンタル「エアークローゼット」を展開する。同社が服の在庫を持つ、売り場を持たないオンラインショッピングのような業態だ。

 会員登録して数日待つと、スタイリストが選んだトップス、ボトムス、ワンピースなど、3着のコーディネートが箱に入って宅配されてくる。しばらく着てから返送すると、再び新たなボックスが届く。月額6800円で、何回返送しても構わない。送料もクリーニング代もかからない。気に入った服は購入することもできる。

 女性向けのオンラインファッションレンタルサービス「エアークローゼット」を間もなく開始するのはノイエジークだ。開始に先立って事前登録を受け付けたところ、約2万人が集まった。「おしゃれを楽しみたい、たくさんの服を着たい。だが時間もお金も限られている」(同社 天沼聰代表)という女性の心をとらえた。

 同社が服の在庫を持って配送する、売り場を持たないオンラインショッピングのような業態だ。倉庫会社・寺田倉庫と業務提携し、衣服の保管・配送・クリーニング・管理などのオペレーションにあたる。コストはかかるが返送回数には上限がある。定期収入を運転資金にあてれば、衣類の販売で収益化が狙える。

 服が実際に着られない、服が多すぎて自分に合った服を選ぶのが難しいといったオンラインショッピングの課題を解決し、既存ブランドの新たな販売チャネルになるのが狙い。

 契約ブランド数はまだ非公表だが「質の高い服」を条件に「大手と話を進めている」(天沼代表)状態だ。着回しを前提としたディスカウント販売も検討している。アウトレットやセールでは消費者に「売れ残りではないか」と疑われるが、服が安い理由を直感的に理解しやすいのが特徴的だ。

 最初の狙いは27~35歳の働く女性。仕事が忙しく、服を買いに行ったり、コーディネートを考える時間がなくコンサバ志向の層を狙う。海外ではすでに同様のサービスを展開する「ル・トート」「レント・ザ・ランウェイ」などが成長しており、ル・トートはわずか3ヵ月で1万人の利用者を集めたそうだ。

 ファッション小売市場は約9兆円規模、約7兆円規模の家電小売市場を2兆円近くも上回る巨大市場だ。しかし、規模自体は1991年の約15兆円をピークに年々縮小傾向にある。消費支出に占める「被服及び履物」に対する支出額の割合も1990年から2009年までに7.8%から4.5%まで減少した。

 服を買わなくなったわけではなく、1人あたりの支出額が減っているのが原因だ。「高いものを買う」から「安いものを探す」に消費者のマインドを移したデフレ型ビジネスが背景にある。

 最初から安い服を売るのではなく、質の高い服を市場に流通させることで「1つのライフスタイル、新しい『当たり前』を作っていきたい」と天沼代表。エアークローゼットのようなシェアリングサービスは中~高価格帯商品の購買意欲を高め、市場を活性化できるのか。利用者の動向にファッション業界の注目が集まる。


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