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携帯普及率20%のミャンマーに進出したKDDIに現地で直撃!

2014年12月04日 12時00分更新

文● 中山智

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品質改善はまずはアンテナの角度調整から

――KDDIが進出してから通信品質などは改善されたのでしょうか?

 ミャンマーに来て真っ先に手を付けたのが、まさに通信品質の改善です。それこそ、アンテナのチルト調整から始めました。当時は電波干渉がひどく、アンテナピクトでは立っているのに、通信が遅いという状況でした。現在では大都市圏のヤンゴン、ネピドー、マンダレーはこの調整がほぼ終わっています。これから周辺地域の調整を進めていく予定です。

――基地局の増設は?

 それもこれから進めていきます。ただここが難問で、日本では人口カバー率を目安にしていますが、ミャンマーでは物理カバー率を求められています。ミャンマー政府からは、国土の最低70%を5年以内にカバーすることに求められているのです。ミャンマーの国土は日本の約1.8倍なので単純計算でも5年以内に日本全国隅々に電波が届くくらいのカバーエリアにしなくてはなりません。

――それはつまりジャングルにも基地局が必要ということですか?

 そうです。それこそ電気もきていないようなところに基地局を建てなければなりません。2Gの基地局なら太陽光発電でまかなえるのですが、3Gの場合はディーゼル発電でないと無理です。人件費が安いので、定期的に燃料を持って行って給油する方法をとっている基地局もあります。なかには止ったら入れに行くという基地局も(笑)。もちろんいつまでもそういった対応をしているわけにいかないので、改善していきたいところです。

ヤンゴン市内でもよく停電するため、自家発電機を用意している店舗が多い

――基地局までの通信はどうするのですか?

 そこも問題です。基地局を建てただけでは通信はできません。基地局を結ぶ回線が必要です。ただ物理的なケーブルとなると、電力のケーブルを敷くのと同じように時間もコストもかかって大変です。また、新設するならメタルケーブルよりも光ケーブルのほうが、のちのち使い勝手も良い。こちらも一足飛びで光ケーブルを施設してはと提案しています。

 またどうしてもケーブルが敷けない場所は、衛星通信などを活用しようと考えています。

「CommuniCast2014」には、通信衛星技術の会社も出展。同ブースの担当者は「午後にKDDIとミーティングがある」と語っていた

――4G(LTE)の導入は?

 当然考えています。どう考えてもデータ通信のニーズが増えますから。それにミャンマーで導入する頃は他国での4Gの普及も進んで、設備機器の価格もこなれてくるでしょうから導入しやすくなると思います。

単純な価格競争にはしたくない

――8月からキャリアも増えて1社独占という状況ではなくなりました。

 マーケットとしては盛り上がっていて、三者三様の料金が出てきています。Telenorが一番安く見える料金体系で、Ooredooはキャンペーンで対抗しています。オペレーター側の競争はすでに始まっていて、MPTも準備を進めています。

看板やパラソルなどキャリアのプロモーションが目立つヤンゴン市内。ラッピング電車も見かけた

――ほかのキャリアに合わせて値下げをする考えは?

 価格だけのシンプルな戦いはするべきではないと思っています。価格競争だけだと、たとえばインドでは、どのキャリアも利益が出せない状況になってしまいました。またラオスでは、競争が激しすぎたため、価格設定に規制が入ってしまい、キャンペーンですら許可制という状況になっています。

 MPTがほかのキャリアに合わせて価格を下げたら、当然ほかのキャリアも反応せざるをえません。そうなるとこちらもさらに対抗となる。現状では新規参入の2キャリアは、設備投資やライセンスフィーなどもあり、採算が取れる状況ではないと思う。

――価格以外での競争になっていく?

 エリアの広さや通信品質など、別の付加価値をつけて認めてもらえるような価格設定をしていきたい。KDDIとしても値下げをして利益が出ないと撤退せざるをえない。それではミャンマーでの通信の自由化が失敗したことになります。そうなると、MPTは国営企業ですので、税金が投入されてしまいます。ごく一部の人しか使っていない携帯電話というサービスのために、国民全員に負担を強いるとなると大問題です。そうならないように勝負していかなければならないと思います。

 価格競争は、日本のように3社とも利益が出せるようになって、通話や通信品質など価値をしっかりと提供できるようになってから考えればよいと思います。

――品質以外の付加価値サービスについては?

 いわゆるOTT(動画や音声などネットを通じてコンテンツを提供するサービス)系ですね。ネットワークの品質が上がれば、音楽配信や映像配信などをキャリア独自のサービスとして提供できます。

 さらに注目しているのが、携帯電話を使った送金システムの「モバイルマネートランスファー」です。国民のほとんどは銀行口座を持っていませんし、クレジットカードなどの普及もまだまだです。そこで、携帯電話で支払いや送金ができるシステムが提供できれば人気になるのではと考えています。


(次ページでは、「ミャンマーでは毎日が新しいことの連続」)

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