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携帯普及率20%のミャンマーに進出したKDDIに現地で直撃!

2014年12月04日 12時00分更新

文● 中山智

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ミャンマーの露天では、KDDIが提携したMPTをはじめ、外国資本2社の計3キャリアのSIMがまとめて販売されていた

 2014年7月に、KDDIと住友商事が、ミャンマーの国営企業であるMPT(ミャンマー郵電公社)と提携すると発表して4ヵ月が経過した。11月にはASEAN首脳会議に出席した安倍首相が、ヤンゴンにオープンしたばかりのMPT直営ショップに訪問したニュースが報道されるなど、現地でのKDDIの動きが日本でも伝えられるようになってきた。

 今回、実際にミャンマーで事業を担当している現地法人トップの長島孝志氏にお話を聞く機会を得たので、ミャンマーでの状況やKDDIの取り組みについて紹介していただいた。

ミャンマーで指揮を執るKDDI Summit Global Myanmar Company Limited(KSGM)の長島孝志社長。KDDIではソリューション戦略本部長やグローバル事業本部長を歴任

SIM購入にオープン前から400人も集まる盛況ぶり

――そもそもKDDIがミャンマーに進出したきっかけは?

長島孝志氏(以下、同) グローバルで見ると、どの国も携帯電話のマーケットは普及率が高くなっています。しかしミャンマーは携帯電話の普及率が低い。KDDIとしては2年くらい前から注目していたのですが、その時点で10%に届かないくらいでした。固定回線網にいたっては普及率は1%です。

 各家庭に電話がありませんので、都心部では露店に公衆電話屋があるくらい。地方では村の有力者の家に1つあって、そこに電話して呼び出してもらうといった状況です。

固定回線の公衆電話屋だけでなく、SIMが入る“イエデンワ”的な端末で、公衆電話を提供している露店も街中で見掛けた

 通信環境がまだまだ未整備ですので、私たちが長年培った経験とノウハウを活用し、通信インフラを整備することで、ミャンマー経済の成長や、国民生活の向上に貢献できると考えたのが、進出の大きなポイントです。国民の所得は高くないですが、これから民主化が進んでいくと所得が増えるはずです。7月まではMPTは唯一の携帯電話事業者でしたが、ほかのキャリアも参入し、今後利用者は増えていくと考えています。

――3キャリア体制になって現在の普及率は?

 実はこの前、数十年ぶりに国勢調査が行なわれて、現在約5100万人とのことです。そして単純に人口比でのSIMの発行数だと20%を超えたくらいだと思います。

 ただ、(新たに参入した外国資本のキャリアである)OoredooとTelenorがスタートしたばかりで、3キャリアのSIMを買って通話や通信の品質を比べている人もいるなど、多くの人が複数枚買っているようです。プリペイドがほとんどのため使い切りで買い換える人も多く、実際には20%以下というところでしょう。

――各社ともSIMの販売が好調なようですが。

 SIMの価格が一般の人でも買えるくらい安くなったのが一番の要因です。6月に私がミャンマーに来たときには9万チャット(約1万円)でした。それ以前は日本円で10万円くらいだったことも。それが今では、MPTの販売価格だと1500チャット(約170円)まで下がっています。

――MPTも販売量も増やしているのですか?

 SIMの価格が高かったときは、ネットワークが脆弱で、設備容量も十分ではなく、出せるSIMの枚数が限られていました。そのため、当時でも売り出せばすぐに売り切れる。そこで、抽選制にして、当たった人が買うという方式をとっていました。

 現在では当時よりもネットワークの品質を改善したので、出荷枚数を増やしていますが、価格が下がったことでやはり出荷すればしただけ売れるという状況ですね。ちなみにMPTでは、9月に約100万枚のSIMを出荷しました。

このインタービューと同時期に、ヤンゴンでは通信関連の展示会「CommuniCast2014」が開かれており、Ooredooもブースを出展しアピールしていた

――中央郵便局にあるMPTの直営店もすごいお客さんでした。

 販売開始は9時からなのですが、7時半くらいから人が集まってきて。(取材した11月19日の)前日は250人、前々日は400人くらい開店前から集まってしまいました。並んでくれないんですよ、みなさん(笑)。

中央郵便局の直営店。筆者が訪れた10時の時点ですでにSIMは売り切れの状況だが、それでもたくさんの客が残っていた

――街中でもSIMは売っていますが直営店が人気の理由は?

 現在はMPTが直接販売する以外に、代理店に卸して小売店が販売するという方式をとっています。MPTが直接販売する場合は1500チャット(約170円)なのですが、代理店から小売店へと流通するあいだにそれぞれ価格設定され、1500チャットで買えない場合もあります。

 少しでも安くSIMを買いたいという人が直営店に集まっているようです。ただ直営店ではその場でアクティベーションをして使えるようにしているので、転売などの目的で購入する人は少ないようです。

街の小売店ではMPTのSIMは6500チャット(約740円)と直営店での価格の4倍以上

――SIMの出荷をもっと増やすことは?

 現状ではSIMを出しても出しても足りないという状況なのでそうしたいところですが、通信施設の容量の関係もありますし、取引先となる代理店との関係もありますので、直営店だけ出荷数を増やすというわけにもいきません。バランスをとっていきたいと考えています。ただ、通信容量を増強していますし、そうすればSIMの出荷数も増やせますので、こういった騒動もいずれ収まるのではと思っています。

――直営店を増やす計画は?

 ぜひやっていきたい。ただこれもSIMの出荷数と同じで、代理店との関係がありますのでバランス良く進めたい。イメージとしては、そこに行けばMPTのことがわかるフラッグシップ店を各都市にひとつずつ配置していく。KDDIで例えると、「au FUKUOKA」「au SHINJUKU」のような店舗を各都市に作りたいですね。

ケータイをすっ飛ばして
スマホから開始のミャンマー

――日本のような回線と端末のセット販売は行なっているのですか?

 ミャンマーでは銀行口座やクレジットカードなどが普及していなくて、プリペイドSIMがほとんどということもあって、MPT自体でセット販売というのはほとんどしていません。サムスンの正規代理店で、「GALAXY Note 4」とのセット販売をしていますが、現状ではこれだけですね。

ヤンゴン市内はサムスンの代理店の数が多く、本格的に進出している様子

――街中ではスマホユーザーを多く見かけます。

 すべてのことが一足飛びで進んでいます。日本では1985年に通信の自由化がスタートして約30年かけて現在の状況になっているわけですが、ミャンマーでは、今の日本と同じ状態に数年でなるのではと思っています。特に都市部では発展の順番を思いっきりスキップして、いきなりスマホです。

モバイルショップでもメインの商品はスマホ。いわゆる激安の「山寨機」から、日本でも販売しているファーウェイやLGといったブランドまで幅広い

――ユーザーはどういった使い方をしているのでしょうか?

 チャット系だとViberを使っている人が多いようです。ただしネット回線が必要ですので、SMSを活用している人も多いです。たとえばSMSで大体の用件を送った上で通話をするとか。

 Facebookユーザーも増えていますね。MPTは公式サイトがありますが、Facebookページも活用しています。公式サイトではなくFacebookページだけという企業も多いですね。

――ネットを活用しているユーザーが多い?

 MPTの場合、通信は時間課金(1分あたりの課金)なので、使いたいときだけオンにするというユーザーが多いです。街中では飲食店などでWi-Fiを提供しているところも増えているので、モバイルデータ通信はオフにしているけど、Wi-Fiはオンにして使える電波を探しているというユーザーが目立ちますね。


(次ページでは、「品質改善はまずはアンテナの角度調整から」)

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