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人月単価、情シスの失墜、肥大化するSIer、そしてSIの将来は?

「納品をなくせば」の倉貫CEOたちが語る新しいSIへの道

2014年12月01日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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大手のSIerが肥大化する理由とは?

 そして、開発責任を丸投げする先となるSIerは、おのずと肥大化せざるをない。これは合併の相次ぐSI業界を見れば明らかだ。倉貫氏は、「大手のSIerはもはや合併して、より大きくならないと儲らない。納品しないとキャッシュが入らないので、体力が必要になる。でも、結局は人月ビジネス。要はマンパワーでビジネスを仕事しているのに、スケールを目指そうとしているのが、すでに経営の戦略としてねじれを生んでいる。でもそうせざるを得ない」と指摘する。

 SIerが大きくなって、数字が積みやすい人月単価を続けるという労働集約的なモデルを続ければ、確かに利益も読みやすい。数多くのプロジェクトを獲得すれば、マイナスがあっても、トータルでプラスになれば、やっていけるというモデルだ。しかし、植草氏は「こういうモデルを脱却しなければならない。僕らはプロジェクトを速く終わらせて、価値に対する報酬をいただいている。だって、しこみに3日間かかるからこのラーメンは一杯5000円というのは、ありえないでしょう」と語る。プロジェクトに時間をかけて人月単価で高いお金をもらうのではなく、本来はスピーディに納品し、そのシステムが生み出す価値の対価をきちんともらえるのが理想というわけだ。

 久保氏は、「今までのSIって“マグロの一本釣り”に近いところがあって、成功するかどうかわからないバクチのような大型案件をとり続けてきた。でも、これに耐えられるのは確かに体力のあるSIer」と指摘する。しかし、昨今はクラウドの影響もあり、少ない人数で、企業に役立つシステムを構築できるようになっている。スマホのゲームでは、最低限プランナー、開発者、デザイナーがいれば、ビジネスを回すことが実現できる。「もっとマイクロな単位で数多くの案件を回すことができれば、SIerが生き残れるかもしれない」と久保氏は語る。

TISの久保隆宏氏

 これに対して、「『納品』をなくせばうまくいく」の著者である倉貫氏は「でも納品をなくさなければ、ダメというのは変わらない。単に小さいSIを作っても失敗するに決まっている」と指摘。久保氏も、「納品=リスクと同じなので、確かに小さいSIerはそのリスクに耐えきれない。継続的な関係を続けるべく、顧問契約のようなビジネスになっていくだろう」と応じる。

システム開発は「ものづくり」ではなく「問題解決」

 最後に伊佐氏は、今後の取り組みやITの方向性について各自の意見を聞いた。

 人工知能の開発を手がけているTISの久保氏は、「課題解決型のシステムはすでに行き詰まりを見せている。今後はソリューションではなく、ユーザーが便利かもわからないような提案が重要になってくる。人の行動を読むという人工知能などは、その1つのきっかけになるのではないか」と語る。

 39万円という定額・短納期のSIを進めるジョイゾーの四宮氏は、「時間や場所にとらわれずに仕事ができるようになっているので、ワーキングマザーの能力を活かしたい。そういった方たちが働きやすい環境をシステム39で作っていきたい」と抱負を語る。

 長らく自身がエンジニアとしてプログラミングに親しんできたM-SOLUTIONSの植草氏は、「昔からコードを書いてきたが、コードを書くこと自体がなくなってくるのではないか? kintoneなんて、コードを書かなくても動くし、Pepper君もそう。ありものもいっぱいあるし、クラウド同士もつながるので、速くやりたい人がSIerに頼めばいい。今後は、自動プログラムが普及するかもしれないし、そもそも日本で作る必要もなくなるかもしれない。だから、SIerは作りたいモノ、便利な提案をどう具現化していくかが重要。コードを書いている場合じゃない」とラディカルな意見を述べる。

 そして、植草氏の意見に対して、「僕は一生コードを書くと思う。コードを書かないヤツなんてくそ喰らえだ!」と語ってパネルメンバーや会場を沸かせた倉貫氏は、聴衆を前に最後こう締める。

ソニックガーデンの倉貫義人氏

「少子高齢化のような問題が顕在化してきたら、人月単価の労働集約的な仕事では人が足りなくなるのは当たり前。大量生産の仕事は海外に勝てるわけない。じゃあ、日本でどんな仕事が残っていくのかと考えたら、僕は“問題解決の仕事”だと思う。みんな、システム開発を“ものづくりの仕事”だと思っているんだけど、実は“問題解決の仕事”。だから、機能いくらとか、時間いくらの仕事にはならない。問題解決が価格に反映されるべきだし、優秀な問題解決者はたくさんのお金をもらえるはず」

「じゃあ、こうした問題解決の仕事は若い人や体力がある人しかできないかというと、実は経験がある人こそできる。少子高齢化のこの先でとても重要な仕事。IT業界であれば、ITを使って問題解決する仕事が残ってくる。こういう時代に、大企業で多くの人を使って大きなプロジェクトできますというバリューが生き残るかというと、そんなことはもはやない。小さい企業でも問題をきちんと解決できる企業が伸びてくるはず」

「日本には課題がいっぱいある。資本主義、政治、地方などいろんな課題が噴出している“課題先進国”なので、問題解決する人がいっぱい必要になる。経験のあるみなさんは、SI企業にしがみついているのではなく、もう(そんな会社は)出ましょう。出ましょうよ。問題はたくさんあるので、仕事はいくらでもある。みなさんが自分でできることで、問題解決していけば、いい未来になると思う」

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