常時起動するPCが新たな提案を生む
前触れなく登場、マウスの超小型スティックPC「m-Stick」開発者に迫る
5月のCOMPUTEX Taipeiから急遽企画を進行
マウスコンピューター製品企画部の平井部長は「以前からAndroid StickのWindows版があったら絶対にウケる」と考えていたという。市場を眺めると、確かにNUCに始まり、GIGABYTEの「BRIX Gaming」、ECSの「LIVA」、ZOTACの「ZBOX pico」といった製品が自作界隈を賑わせている。共通しているのは、AtomやCeleronといったBayTrail系の低消費電力CPUを搭載し、手の上に載るほどの小型の筐体、そしてWindows 8.1 with Bing搭載で低価格といった点だ。
平井部長は「きっかけはCOMPUTEX Taipei。ベアボーンより小さいスティック型を検討していたところに、それにぴったりの規格があることを知りいち早くリリースしたいと考えた」と話す。
消費電力の低さが、常時起動するPCというスタイルを導く
本体の消費電力は高負荷時最大10Wをうたっている。
しかし簡易ワットチェッカーを使って、本体の消費電流を計測すると、OSが起動し、ソフトが実際に動いている状態でも、0.45~0.5A強の範囲にとどまっていることが分かる。約5VのUSB給電で動作するため、ワット数でいうと多く見積もっても3W以下。平均的に見ると、動作時でも2.5W前後になる計算となる。一般的なデスクトップPCが数百ワット、ノートPCでも40~60W程度の電源を使うことを考えると、その低さが分かるだろう。
PCとして不可欠のCPU、メモリー、ストレージ、無線LAN、フルサイズのUSBやmicroSDカードスロットといった要素は押さえつつ、ディスプレーなどは外付けすることで、システムとしてミニマムの電力消費に抑えているためだ。
このサイズということで当然のようにファンレスとなるため、テレビ周辺は熱がこもることも想定されるが、その場合はスロットリングにより、CPU性能自体が落ちて発熱を下げ、システムフリーズ等を防ぐ設計になっているという。
この低消費電力は「PCの利用方法を変革する」と平井部長は話す。簡単に言うと、使うときに電源を投入し、使い終わったら電源を切るという当たり前の手順が不要になり、常時PCを付け続けても、問題なくなるからだ。「チャンネルがひとつ増えるのと同じ感覚で、リビングのテレビにPCの画面が出るようになることで、新しい活用方法が生まれてくる」ためだ。
たとえばインターネットのラジオ放送などを常時録画して、必要なときはカードだけ抜いて持ち歩くこともできるし、NASあるいはOneDriveのような外部ストレージと連携して、テレビの画面に別のパソコンで作ったファイルを表示することが可能となる。USB端子を持つため、テレビチューナーをはじめとした周辺機器との連携も面白いだろう。
テレビのスイッチを入れるだけで、パソコンの画面が表示されれば、机を片付けてノートを開く、あるいはデスクトップが置かれた場所に赴くといった動作なく、生活の中にパソコンが溶け込んでくる。フルHD出力にも対応しており、タブレットでブラウザーゲームを楽しむのに近いシンプルさで、テレビの大画面にお気に入りのキャラクターも表示できる。
一方2.5W程度の消費電力であれば、コンセントにつないで使うのではなく、スマートフォンやタブレット用のモバイルバッテリーによる駆動も可能になるだろう。テレビやディスプレーにはUSB端子を持つものも多く、その端子に接続し、すっきりと使うということもできる。ディスプレーレスという特徴を生かし、プロジェクターのHDMI端子に直結してプレゼンしたり、動画を楽しむというのも現実的だ。
フルHD出力に対応しつつ、ディスプレーを持たないというメリットがスティックサイズの筐体を実現し、どこにも持ち運べ、さまざまな映像機器と連携できる新しいスタイルを提案する。ディスプレーレスでの利用ももちろん可能なので、リモートデスクトップクライアントを利用して、手元のタブレットでm-Stickを操作したり、あるいは最近話題のハイレゾ音源を楽しむために、据え置きのUSB DACのすぐ脇に置いても邪魔にならないPCとして使うなど、利用シーンの想像にはこと欠かない。
そこで何が起こるか。ユーザーがどういう活用方法を考えだすか。そんな化学変化を見てみたいとマウスコンピューターも考えている。
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