本田技研工業は11月17日、新型の燃料電池自動車(FCV)のコンセプト「Honda FCV CONCEPT」を発表した。FCV自体もさることながら、FCVからAC出力を取る外部給電器「Honda Power Exporter CONCEPT」にも注目したい。
FCVは70MPaの高圧水素貯蔵タンクと水素燃料電池(出力100kW以上)により、700km以上を走行できる水素燃料電池車。外部給電器ユニットHonda Power Exporter CONCEPTも注目だ。これはFCVから給電して9kWのAC出力を可能とする装置で、災害時などでもFCVが中心となった電力提供ができるとしている。
Power Exporterは、いわばFCVと一緒に利用できる変圧器なのだが、外観的には同社がすでに販売しているガソリンエンジン式ポータブル発電機のような外観をしており、将来的には水素燃料電池搭載のポータブル発電機を予感させる。FCVの燃料電池スタック自体はガソリン車のエンジン並みのサイズで、小型(かつ低価格)なモデルが開発できるかどうかは未知数だが、ポータブルクラスが普及すれば原付きバイクを始め、祭りやイベントにおいて屋台の後ろで騒音を立てている発電機なども代替するものができるかもしれない。
なお、水素燃料電池車としては、同じく11月17日にトヨタは次世代のセダンタイプFCVの名称を「Mirai(ミライ)」とすることを発表した。こちらも数年前から市販に向けて各種試験や改良が進められている。どうやらホンダやトヨタは本腰を入れて水素燃料電池車の実用化に取り組んでいるようだが、気になるのは肝心の水素供給インフラの整備。
ホンダでは、コンプレッサーが不要な高圧水電解システムを採用し、水素製造から充填までをパッケージングした小型の「スマート水素ステーション」を展開しようとしている。また、水素供給を行う岩谷産業では先だって水素供給価格を1100円/kgとすることを発表した(液体水素からの供給価格)。この価格は燃料電池車がハイブリッド車(HV)の燃料代と同等となることを前提とした価格という。これは今年6月に経済産業省 資源エネルギー庁より発表された「水素・燃料電池戦略ロードマップ」において『2015年にガソリン車の燃料代と同等以下、2020年にはハイブリッド車の燃料代と同等以下』という目標を5年も前倒しして実現した価格設定。燃費面でガソリン車やHVを超えることが確実になれば、水素燃料電池車を中心とした水素社会の到来は案外近いのかもしれない。