このページの本文へ

品質、品格、ハイブリッドでAWSに勝つ

IBM、SoftLayerの東京データセンターを年内開設へ

2014年11月13日 14時00分更新

文● 福田悦朋

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 日本IBMは今年(2014年)11月12日、クラウド事業の中核を成すサービス「SoftLayer」に関する戦略を発表。SoftLayerの東京データセンター(東京DC)を年内(今年12月中旬)に開設することを明らかにした。

サーバー1万5000台の配備を完了

 SoftLayerは、IBMが昨年(2013年)7月に20億ドルで買収したパブリッククラウドサービスだ。IaaS(Infrastructure as a Service)のサービスを軸に、PaaS(Platform as a Service)/SaaS(Software as a Service)のサービスを提供。物理サーバー(ベアメタルサーバー)をオンデマンドで構成し、従量課金でレンタルするユニークなサービスも展開している。また、アプリケーション開発基盤の「Bluemix」や、OpenStackベースのサービス「IBM Cloud OpenStack Services」、認知(コグニティブ)コンピュータの「Watson」といったIBMのテクノロジーが利用できるほか、OpenStack APIと各クラウドサービス・プロバイダー独自のAPIとの互換性を確保するツールによって、クラウド間の相互運用性も担保している。

 SoftLayerの買収以降、IBMは、自社テクノロジーとSoftLayerとの融合を進めるのと併せてデータセンター(グローバルDC)の増強にも注力。12億ドルの資金を投じて、SoftLayerのグローバルDCを「2014年内に世界40カ点(2013年12月時点で世界13カ所)に拡大させる」という計画を進めてきた。今回の東京DCはこの計画に沿って開設されるもの。「すでにサーバー1万5000台の配備が完了している。他のグローバルDCと同様に、共通のインターフェイスを通じてSoftLayerのあらゆる機能が利用可能になる」と、SoftLayerの創設者(現IBM SoftLayerカンパニーCEO)、ランス・クロスビー氏は語る。

加速する「IBM as a Service」への転換

 東京DCの開設と併せて、IBMは、企業・組織によるSoftLayerの活用に一層の弾みをつけるべく、システム構成・運用機能設計・セキュリティ情報などを業界別・業種別にまとめた「業界業務プロファイル」の提供も始動させている。

 これは日本独自の施策だが、すでに金融、ゲーム、建設、エンジニアリング、CRM、デジタルマーケティング、ハイパフォーマンス・コンピューティング、「SAP ERP」グローバル展開、Internet of Things(IoT)など、さまざまな業界・業務、用途に向けた11種のプロファイルが用意されている。

画面は金融業界向けのプロファイルで、FISC(金融情報システムセンター)安全対策基準に対応。IBMは、SoftLayerの「安心」「効率的」な活用を実現するとされる「業界業務」プロファイルを日本で提供する

 これらのプロファイルは、IBMのみならずSoftLayerのパートナー各社からも提供されている。日本のSoftLayerパートナーの数はすでに150社に上り、そこにはプロファイルの提供パートナーのほか、NTTデータ、TIS、伊藤忠テクノソリューションズといったシステム・インテグレーション・パートナー、さらには、NTTコミュニケーションズなど、SoftLayerと他クラウドとの接続サービスを提供するパートナーなどが含まれている。

 こうした企業向けの展開を踏まえながら、クロスビー氏は、「エンタープライズクラウド」プロバイダーとしてのIBMの優位性を改めて説く。

 「IBMには、企業ITの領域での豊富な経験と実績がある。将来的に企業ITのワークロードの5割~8割の範囲でパブリッククラウドに移行するだろうが、それ以外はオンプレミスに残る。となれば重要になるのは、いかに優れたハイブリッドクラウド・ソリューションを提供できるかどうか。その点でIBMには圧倒的なアドバンテージがあり、それこそが(アマゾンのように)パブリッククラウドサービスしか提供してこなかった企業との差だ」。

 さらに、クロスビー氏とともに発表会に出席した日本IBMの小池 裕幸 執行役員・クラウド事業統括担当は、SoftLayerの利点はこう指摘する。

 「SoftLayerは、企業・組織のITプラットフォーム。そこに我々が追求しているのは高い品質と品格であり、品格とはつまり、ベンダーロックインの心配がない、オープンな環境であることを意味する。しかも、SoftLayerは高性能かつ堅牢で、セキュリティ・レベルも高く、Watsonなど、最新のIBMテクノロジーも利用できる。是非とも、SoftLayerで企業のIT・ビジネスの変革を加速させたい」

「企業向けのクラウドプラットフォームに求められるのは品質と品格」と語る日本IBM 執行役員・クラウド事業統括担当の小池 裕幸氏

 SaaSとして提供されるWatsonは、SoftLayerのキラーコンテンツの1つと言えるが、今のところ日本語には対応していない。ただし、金融機関のコールセンターでの活用や医療分野への応用など、日本でもニーズが高いことから、「日本語化も進行中」(小池氏)とのこと。また、大阪でのSoftLayerデータセンターの開設も視野に入れているという。

クラウドサービスの傾斜はなにを意味するか?

 周知のとおり、2014年に入り、IBMの業績(ワールドワイドでの売上げ)は芳しくない状態が続いている。9月までの3四半期合計売上げ(継続事業の総売上げ)は、前年同期比3%減の687億ドル。7月~9月の第3四半期売上げも前年同期比4%減の224億ドル(前年同期4%減)にとどまった。

 なかでも落ち込みが激しいのはハードウェアで、第3四半期の売上げも前年同期比15%減の24億ドル。損失額も9900万ドルに達したという。サーバーハードウェアの売上げを製品ラインごとに見ると、「Power Systems」が前年同期比12%減、「System x」が同10%減、「System z」に至っては同35%減といった状況だ。言うまでもなく、仮想化によるサーバハードウェアの集約化、コストパフォーマンス競争の激化、クラウド化の流れを考えれば、ハードウェアの売上げが好転する可能性は低い。となれば、ハードウェア販売とそれに付随するサービスの依存度をさらに下げ、今後の成長が見込めるクラウドサービスへの傾斜を強めるしかないとも言える。

 すでに、IBMの売上げの大きなポーションは、サービス(グローバルテクノロジーサービスとグローバルビジネスサービス)の収入で占められているが(第3四半期のサービス売上げは前年同期比3%減・137億ドル)、SoftLayerをテコに事業全体のサービス化の流れを一層進展させるのが―たとえ、それによって売上げの絶対規模が小さくなったとしても―必須なのかもしれない。

 「SoftLayerの買収を機に、IBM社内の意識も構造も、ハードウェアの販売とそれに付随するサービスの収入に依存していた従来とは大きく変わりつつある。IBM as a Serviceへの転換という、構造的な変化がまさに進行中だ」と、クロスビー氏は言う。

 SoftLayerの攻勢でクラウド市場の勢力図、そしてIBMはどう変容するのか――。今後の行方に注目が集まる。

カテゴリートップへ

ASCII.jp特設サイト

クラウド連載/すっきりわかった仮想化技術

ピックアップ