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業界人の《ことば》から 第117回

Hitachi Innovation Forum 2014 TOKYO:

社会貢献するなら、儲からないといけない──日立CEO

2014年11月11日 09時00分更新

文● 大河原克行

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人間の行動を予測し、混雑状況を知る実証実験も

 ところで、交通領域における課題解決への取り組みとして、今回のHitachi Innovation Forumの展示会場において、ひとつの実証実験を行ってみせた。

展示会場内の各所に設置したセンサー

 それは、展示ホール全体を対象に行った「人間行動分析技術」を適用した体験型デモンストレーションだ。

 展示会場内の各所に設置したセンサーから得られる人の流量データを収集し、これを分析。5分後の各コーナーの混雑状況を予測し、その結果をディスプレイに表示。来場者は混雑している場所を避けて、効率的に展示を閲覧できるようにした。

 これも交通渋滞緩和などに利用できる技術だということができよう。

人の流量データを収集し、これを分析。5分後の各コーナーの混雑状況を予測し、その結果をディスプレイに表示。

交通の発展は便利になるが、渋滞で住みにくくなるなど社会的課題が生まれる

 中西会長兼CEOが、「共生自律分散」の重要性を語る背景には、個別最適化のシステムやインフラ環境では、課題解決においてすでに限界が達していることがあげられる。

 「個々に成長してきたインフラやビジネスを磨き上げていくことは大切だが、個別最適化は、リソースの無駄や、システムの複雑化をもたらし、脆弱性を生むことにもつながる」と指摘し、「たとえば、交通を発展させると便利にはなるが、交通渋滞を起こし、住みにくくなるといった社会的課題が生まれる。また、なにか災害が起こったり、天候の影響で交通網が麻痺すると、社会そのものが機能しなくなるという脆弱性も生まれる。交通網だけを整備するといった個別最適では解決ができない問題が生まれてくる。とくに社会インフラは、様々な情報や仕組みが連携して、協調することができる全体最適の使い方が必要になる」と述べた。

社会に貢献するのであれば、その仕事は儲からないといけないに見合った成果を上げられるか。

 そして、「たとえば機械同士が連携するIoTは、共生自律分散のベースになる動きである」とも語る。

 日立の社会イノベーションの考え方は、個別最適では解決できない問題に対して、情報技術を活用して、社会に貢献するというのが基本的な姿勢になる。

 「ITの利活用によって、世界の距離と時間が縮まるなかで、エネルギーや環境問題、水や食料、安全保障といった世界的な課題を考えていかなくてはならない。日立が、社会イノベーション事業で世界に応えるなかで、経済成長と社会課題解決を両立する必要がある」と中西会長兼CEO。「日立は、社会イノベーションで夢あふれる豊かな社会の実現を目指している。この実現に向けて、技術開発に必死で取り組んでいきたい」と語った。

第2四半期の営業利益は過去最高になった

 日立製作所は、先頃発表した2014年度上期(2014年4月~9月)の連結業績において、売上高は前年同期比0.6%増の4兆4967億円、営業利益は23.4%増の2140億円、税引前利益は54.6%増の2095億円、当期純利益は179.4%増の915億円の増収増益を達成。第2四半期の営業利益は過去最高になったという。

 また、この業績を受けて、2014年度通期業績見通しを、売上高では1000億円増の9兆5000億円、営業利益では200億円増の5800億円、当期純利益では200億円増の2500億円へと上方修正し、営業利益は過去最高を目指すことになる。

 「営業利益率は6.1%。だが、実行面ではもう少し高いところを目指したい」(日立製作所の中村豊明執行役副社長兼CFO)と語る。

 今回の業績を見る限り、中西会長兼CEOが語る「社会に貢献するのであれば、その仕事は儲からないといけない」という言葉通りの成果があがっている。

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