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麻倉怜士のハイレゾ入門講座 第3回

ハイレゾはなぜ音がいいのか? 聴こえない心地よさの秘密

2014年12月28日 15時00分更新

文● 編集部、語り●麻倉怜士

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熱帯雨林の音とハイパーソニック効果

 でも人間には、そんな音は聞こえてないはずなのにおかしいと思うでしょう? だから先生は実験してみたんです。脳科学的な実験で、血流がどのくらい流れるのかなというのを、被験者に色々な音を聴かせて確かめたそうです。

 そうすると20kHzまでは、あんまり伸びないんだけど、50kHz、つまりハイパーソニックと同時に聞かせるととたんに血流が増えるらしいんですよ。おそらく20kHzまでの音は耳で聞き、それ以上の音は体で感じるのでしょう。それが神経を通って脳に伝達する。つまり、異なる刺激が足し算で脳に伝わるのです。

 これを山城先生は“ハイパーソニック効果”と名付けました。色々な場所で実験したところ、(可聴域外の情報が)一番入っていたのは熱帯雨林の環境音ということでした。林があり、風があり、葉っぱがこすれる音があり、虫の音があり、動物の鳴き声がある。その全体を合わせた環境音では、ハイパーソニックが本当にたくさん出ていました。

 僕も実際に体験しことがあります。お弟子さんの仁科エミ先生の講演を聴いたときの話です。最初に変なことをされるんですよ。なんか、講演の5分ほど前からザワザワザワ……という音をスピーカーから流すんです。「何でこんな音がしてるのかなぁ」って思っているところで、先生がお話を始める。聞いているうちに、その音は聞こえなくなって、先生の声の方がクッと立って聞こえるようになる。すごくクリアに。

 そこで先生が種明かしをするのね。「実はこの音は熱帯雨林の音で、ハイパーソニックがたくさん入っています」って。「じゃあ、この音を切ってみましょう」と言って切ると、先生の音もすっごく弱くなるの。明瞭度が落っこちてなんか、弱い感じになるんです。その後で「じゃあ、もう一回入れてみましょう」って。その音が入ると、先生の音がすごくしゃっきりとしてきて、とっても認識がクリヤーになる。

 つまり、人間が聞こえない範囲まで高域を出すのは、決してムダなことではないということですね。知覚を明確にする一つの決め手のようにも感じます。それはハイレゾの効用の確かなものです。そのためにもサンプリング周波数は44KHzより96kHzのほうがいいし、量子化ビット数は8bitより16bit、24bitのほうがいい。小さい音から大きい音まで収容できるので。サンプリングレートとダイナミックレンジの両方がよくなると、音の体積が増えように感じるのですね。

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