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麻倉怜士のハイレゾ入門講座 第1回

ハイレゾ前史:人はいい音という普遍的な夢を追い求めてきた

2014年11月12日 17時00分更新

文● 編集部、語り●麻倉怜士

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音源は10年前と変わらない、配信の力がブームを生んだ

 実はいまのハイレゾデータの中身は、2000年代前半に登場したDVD-AudioやSACDと全く同じなんです。じゃあなぜ、いまハイレゾが流行ってきたのかというと、配信サービスが登場して、プレーヤーを買わなくても、みんなPCで聴けるようになったからです。PCはネットにもつながっているから、後はUSB-DACを買ってつなげればよいという話になる。非常に少ない初期投資で始められるんです。

 この“配信のスキームが出た”っていうのは、ものすごく大きい。最初に言った「良い音で聞きたい」という“人類普遍の願い”はいつの時代にもあった。みんながCDやレコードより良い音を望んでいるけれど、DVD-AudioやSACDでは手が届きにくかった。しかし配信によってそこに近づくことが可能になった。こういう仕掛けができたことが一番大きいでしょうね。

 以上はユーザーサイドの意見ですけど、クリエイターサイドから言ってもハイレゾ配信にはメリットがあります。例えばSACDでもDVD-Audioでもいいけど、パッケージを作るためには相応の予算が必要になるわけですよね。

 その予算の内訳は3つぐらいあって、ひとつは“制作費”です、音源を作ったり、マスタリングするための費用。これはハイレゾであってもなくても一緒です。次にCDそのものの“製造原価”。(ジャケットの印刷費用やケースに加えて)プレスするための費用になりますね。最後が市場に出すための“流通費”。(小売店などのマージンに加えて)宣伝費なんかもこれに含まれます。

 こういう制作の流れを鑑みると、CDの場合、予定枚数がある一定以上見込めないと、企画が通せないし、予算も出せない。 先に進めないんですね。そういう意味ではパッケージっていうのは“重い”メディアなんですよ、作る側からしてみると。

 けれども配信になれば、サーバー費用はかかるけど、CDをプレスするための費用はカットできるし、流通費用もほとんど必要なくなる。純粋な音源の制作費だけにお金をかければいい。手軽な感じで作れるし、さらに録ったその日、ライブをやって終演後3時間で配信するといったことも可能になるわけです。

 パッケージだけでは限界があったものが、配信をすることによって、音楽を届ける手段が広がり、良いコンテンツを作ろうというドライビングパワーになったわけです。

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