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麻倉怜士のハイレゾ入門講座 第1回

ハイレゾ前史:人はいい音という普遍的な夢を追い求めてきた

2014年11月12日 17時00分更新

文● 編集部、語り●麻倉怜士

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音は良いが普及しなかった、次世代CDフォーマット

 その成果と言えるのが、DVD-AudioSACDです。

 次世代のCDは結果、2つの陣営に分かれて競うことになったんですが、今のハイレゾの状況を反映している面があってなかなか興味深いです。

 まずDVD-Audioは「DVDにはCDの8倍ぐらいの容量を記録できるので、それを映像でなく全部オーディオに使えば、より多くの情報量が取り込める」という考え方です。つまりCDの延長で、サンプリングレートを上げて、ビット数も増やして、最高で192kHz/24bitまで行きましょうと。これは今のハイレゾとまったく同じ理屈ですね。

 もうひとつのSACDは、CDとは全く違う音を作ろうというアプローチでした。CDではどうしてもデジタル的な、硬い音になる。ではどうしたら、アナログ的な柔らかく、しなやかな音になるのか。アナログとデジタルの一番の違いは、1と0の信号で音を表すデジタルに対して、アナログは波の形で表すという点です。波がたくさんあると音が高くなって、少ないと音が低くなる、波の振幅が大きいと音が大きくなる。それこそアナログです。

 波の形で音を表すのが、アナログの特徴。だったらデジタルでも波で表すような信号処理ができないか。そう考えてソニーとフィリップスが作り出したのが、1ビット方式のDSDというものですね。その中身についてはあとで触れますけど、それがSACDに採用されたのです。

 この1990年代以降盛り上がった“CDより新しいディスク”を直径12cmのサイズで作ろうという動きは、明らかにHigh Fidelityという観点で望ましいものでした。つまり、より“生の音”に近付けるということです。

 しかしそれは普及しなかった。なぜかというと、プレーヤーを買い直さなくていけないからです。従来のCDプレーヤーでも再生できるようにするために、(CD用の記録層も持つ)Hybrid SACDも開発されたのですが、いずれにしてもハード的な制約があった。そして「作る方だけじゃなくて、買う方も大変だな。音はいいんだけどね」といった状況ができてしまった。

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