特許クロスライセンス合意に違反しているとしてMicrosoftがSamsungを提訴して2ヵ月(関連記事)。Microsoftが自社特許使用のためのライセンス料金の不払いの利子として690万ドルをSamsungに要求した。
そこで明らかになったのが、両社の合意のもとでSamsungが過去に支払っていた金額だ。Windows Phoneどころか、Windows Phoneを含む当時の事業部全体の利益よりも多くをMicrosoftが受け取っていたのだ。
Samsung1社だけで
Androidの販売に対し年10億ドルを得ていたMicrosoft
10億ドル――Microsoftが1年間でSamsungより受け取った特許ライセンス料金だ。MicrosoftとSamsungは2011年、特許クロスライセンスを締結しており、この合意のもとでSamsungが2012年に支払った金額となる。そしてMicrosoftは8月、Samsungがその後に特許ライセンス料金を支払っていないとして苦情を申し立てた。
Microsoftは言わずと知れた大企業ではあるが、それでも10億ドルという規模はかなりのものだ。7月に発表したMicrosoftの会計年度2014年の売り上げは868億3300万ドル。同年第4四半期(2014年4~6月)、デバイス&コンシューマー部門は100億ドルを売り上げているが、これは同社のコンシューマー部門すべてを含んでいる。
このうち携帯電話ハードウェアでの売り上げは19億8500万ドル。これにはWindows Phoneベースの「Lumia」シリーズ、それ以外のNokiaの携帯電話も含まれる。SurfaceとXboxを含むコンピューティングとゲームハードウェアの売上高は14億4100万ドルだ。
Windows Phone事業が含まれるようになった再編前のエンターテインメント&デバイス事業部でみると、2013年度(2102年7月~2013年6月、この期間はSamsungが10億ドルを支払った時期と重なる)の営業利益は8億4800万ドル。
同事業部はWindows Phoneのほか、SkypeやXboxなども含まれており、SamsungがGALAXYブランドのスマートフォン、タブレットを販売することでMicrosoftに入ってくるライセンス料金は、実にこれらを上回っていたことになる。
すべての特許に商業価値があるわけではない
よく知られているように、Android勢への対抗戦略はAppleとMicrosoftでは異なる。AppleはSamsungなどを特許侵害で訴えるのに対し、Microsoftは特許クロスライセンスにより利用料を得るというものだ。MicrosoftはAndroidに関連してSamsungのほか約25社と特許クロスライセンスを結んでおり、HTC、Huawei、ZTEなども含まれている。
個々のライセンス合意の内容は公開されていないが、Samsungから1年で10億ドルとなれば、合計がその1.5~2倍程度あったとしてもおかしくない。AndroidメーカーのライセンスビジネスはMicrosoftにとってそれなりの事業となっているのだ。
他社技術(GoogleのAndroid)に含まれる特許を、その技術を利用して製品にする(SamsungのGALAXYシリーズなど)ベンダーから利益を得るというビジネスモデルの持続性には疑問もあるが、少なくともMicrosoftは法廷で対立するというAppleとは異なる選択肢を取り、そしてAppleよりも大きな利益を得ている(たとえばAppleは5月、Samsungに損害賠償を命じる評決を獲得したが、その額は1億1962万ドル。しかもAppleもSamsungに15万8400万ドルを支払うというものだ)。
特許クロスライセンスは2社が相手企業の自社特許の使用をお互いに認めるというもので、MicrosoftがAndroidに含まれていると主張する自社特許、相手の特許、それぞれの市場価値からライセンス料がはじき出されることになる。だが、Microsoftをはじめ、スマートフォン/モバイル分野での特許訴訟で主張されている特許の価値に首をかしげる向きもある。
スマホ関連特許に明るいFlorian Mueller氏(関連リンク)は、スマホ特許係争で主張されている総計222件の特許のうち、メリットをもたらしているのはわずか9%と分析している。財務サービスのM-Cam(関連リンク)はよりフォーカスを絞り、MicrosoftがAndroidに含まれていると主張する127件の特許を分析、このうち商業的に価値があるのは21%と報告している。
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