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本質的価値は「プロダクティビティ」と「プラットフォーム」にある

来日中のマイクロソフト・ナデラCEO、開発者イベントで語る

2014年10月03日 06時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 日本マイクロソフトが10月2日に開催したソフトウェア開発者向けイベント「de:code Special Edition」では、CEO就任後初めて来日した米マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ(Satya Nadella)氏が登壇した。変化するマイクロソフトのビジョンを、「プロダクティビティ」と「プラットフォーム」という2つの軸に基づき語った。

米マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏。前日には日本市場独自の「Office 365 Solo」サービスなども発表し、日本市場への強いコミットメント姿勢を示している

過去のOfficeの実績に頼らず「プロダクティビティの刷新」を

 ナデラ氏は、ITの世界で急速に進む「モバイルファースト」「クラウドファースト」の動きに対して、マイクロソフトが提供できる本質的価値は「プロダクティビティ(生産性)」と「プラットフォーム」の2つだと語る。

ナデラ氏は、マイクロソフトの価値を「プロダクティビティソリューション」と「プラットフォーム」の2点に集約して説明する

 同社のプロダクティビティ製品と言えば、その代表選手は「Microsoft Office」であり、日本市場では特にその傾向が顕著だ。しかしナデラ氏は、これまでのOfficeの実績に満足することなく、モバイル/クラウドの世界に向けた「プロダクティビティの刷新」を実行していく姿勢を強調した。たとえば、多数のドキュメントから関連性に基づく検索を行う「Office Delve」、OCR機能を備えたカメラアプリ「Office Lens」、そして「PowerBI」といった最新ツールは、そのビジョンを実現した例だという。

 また、プロダクティビティの刷新を考えるうえでは、「エンタープライズ」と「コンシューマー」という2つの領域の融合も進めていきたいと、ナデラ氏は語った。「よく『マイクロソフトはエンタープライズの会社か、それともコンシューマーの会社か』という質問を受ける。わたしは『ユーザーの会社』だと考えている。ユーザーは、働いてもいるし私生活も送っているからだ」(同氏)。

 その“融合”の良い例が、Windows Phoneが搭載しているパーソナルアシスタント機能の「Cortana(コルタナ)」だという。Cortanaは、ビジネスと私生活を区別せず、1人のユーザーを中心としてすべてのデータを把握し、その日のスケジュールやなすべき作業をアドバイスしてくれる。同様に「OneDrive」「Skype」「Lync」「Outlook」といったプロダクトも「デュアルユース(両用)」技術であり、ビジネスと私生活の境界をさらにシームレスなものにしていきたいと、ナデラ氏は語った。

ナデラ氏のスペシャルセッションは、日本マイクロソフト 執行役 デベロッパー エクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら氏との対話形式で進められた

開発者に魅力的なプラットフォームを提供する

 一方で、ビジネスと私生活の世界を融合していくうえでは、PCやタブレット、スマートフォン、スマートTVといったデバイスの境界も乗り越えていく必要がある。ナデラ氏は、先日発表されたWindows 10(関連記事)によって、デバイス間の融合が大きく進むだろうと述べた。Windows 10の発表では、PCからXboxまで“Windows”という1つのプラットフォームの下に融合を進める方針が強調されている。

 この方針も含め、ソフトウェア開発者にとって魅力的で価値のあるプラットフォームの構築を重視している、とナデラ氏は説明する。単一コードで幅広いデバイスに対応する「Universal Windows Apps」のビジョンを始め、生産性の高い開発ツールと制約の少ないプラットフォームを提供し、Windowsストアを通じてより多くのエンドユーザーにリーチできる環境を実現していく。

 「開発者に対し、最も幅広いチャンスを提供できるのがマイクロソフトだと思う。その点において、マイクロソフトは前進している」(ナデラ氏)

開発のプロダクティビティをさらに高めるために、マイクロソフトではプラットフォームの改善を進めている

 ナデラ氏は特に、マイクロソフトのプロプライエタリな環境だけでなく、LinuxなどのOSや幅広い開発コード、フレームワークなどにも対応していることを強調した。「開発者には拡張性が与えられている。皆さんの持っているアセットを最大限に活用して、すばらしい仕事をしていただきたい」(ナデラ氏)。

 さらに、Azureクラウドをバックエンドとして利用することで、グローバル進出の際に頼れるインフラとなるだけでなく、IoTデバイスへの対応やストリーミングメディアといった新しいサービスがすぐに利用できることもアピールした。

 「マイクロソフトは日本で成功し、日本の開発者のフィードバックからもこれまで色々と学んできた。これから、皆さんと頻繁に会えるかたちにしたいし、高い要求を満たせるよう努力していきたい。皆さんからのフィードバックを本当に楽しみにしている」(ナデラ氏)

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