HTCがタブレットに“再”進出する模様だ。同社はGoogleの「Nexus」ブランドを冠した3機種目のタブレットとなる「Nexus 9」を開発中で、間もなく発表と現在予想されている。しかし、赤字が続いたHTCにとってNexusブランドがどのぐらい後押しになるのか楽観できないように見える。
「Android L」搭載で10月に発表か
Nexus 9はその名の通り9型(8.9型)の画面を持ち、OSは「Android L」となる模様だ。おそらく、今年の秋といわれているAndorid Lの正式発表と同時にお目見えになると予想できる。
チップはNvidiaのTegra K1 Denverを搭載すると見られている(というのも、Nvidiaが9月にQualcommとSamsungを相手取って起こした訴訟で、「2014年第3四半期に登場予定のHTC Nexus 9はTegra K1を搭載すると予想されている」という文言が、削除された法廷書類にあったとの指摘がある)。
第3四半期はほとんど終わったが、HTCは10月8日にニューヨークでイベントを開催することになっている。このイベントの招待状には「double exposure(二重露出)」と写真に関する用語が書かれていることが報道されているため、Nexus 9が登場すると断言するのは難しそうだ。
発表がいつになるのかはさておき、Nexus 9が実現すればHTCにとって2機種目のタブレットとなる。HTCは2011年に「HTC Flyer」というAndroidタブレットを発表しており、実に3年ぶり、2度目の挑戦となる。振り返ると2011年のMWCは同社のピーク期といえ、その後スマートフォン事業がスランプに陥った時期とFlyerの失敗とが重なる。タブレットでの成功は同社にとっては悲願なのかもしれない。
HTCのNexusは「Nexus One」以来2機種目
HTCはその後大ヒット商品に恵まれず、Samsungとの差が開くばかりだ。業績面でも苦境が続いてきたが、第1四半期の業績発表時に第2四半期からは黒字に戻るとの見通しを出している。HTCは3四半期連続で営業損失を計上しており、3月に発表した最新のフラッグシップ「HTC One M8」で巻き返しを図ってきた。
やっと好転の兆しが見えてきたところで、HTC One M8にはWindows Phone版も登場しており、ともに評判は上々。だがHTCが、Androidでトップメーカーに躍り出た当初からスマートフォン市場は大きく変わっている。利用者の裾野が広がっており、マーケティングとマスへのアピールの重要度が増している。HTCはコアのファンを持つがマスへのアピールという点では、課題は完全には解決していないようにみえる。
だがFlyerの失敗以来、スマートフォンに専念してきた同社にとって今年は再起の年。当初からウェアラブルなど製品を多様化していく戦略を明確にしており、タブレット再進出もその流れにある。
では「Nexus」としてGoogleと組むことが、その解なのか? その前にFlyerがなぜ失敗したのかを考えたい。当時としては小さめの7型サイズ、スタイラス入力など独自さもあったが、Googleが当時タブレット向けに設計した最新のAndroid 3.0(Honeycomb)ではなくAndroid 2.3(Gingerbread)を搭載していたこと、ハードウェアでのHDMI出力がないなど、機能面で同時期登場したタブレットと比較すると劣る部分があった。
NexusブランドでGoogleと組むことで、最新のAndroidにアクセスできるなどのメリットはあるだろう。だがNexusはリファレンスとしての意義が大きく、Nexusブランドの製品がこれまですべて商業的に成功しているかというとそうでもない。ASUSは「Nexus 7」でタブレット事業を成長させたが、スマートフォンでNexusを投入したあるメーカーの担当者は、「Nexusは自社にとってそれほどいいビジネスにはならない」と語っていた。
Nexus 9が実現すれば、HTCにとっては2010年の「Nexus One」以来のNexus製品となり、NexusタブレットとしてはASUSのNexus 7、SamsungのNexus 10に次ぎ3機種目となる。
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