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今年70歳を迎えたエリソン氏、若返りへの処方箋か?

CTO就任はエリソン氏の意地?人事から見るオラクルの方向性

2014年09月30日 14時00分更新

文● 大河原克行

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 Oracle OpenWorldの会場で、ハード氏は記者の質問に対しては、こんな風にも答えていた。「私はラリーの代理ではない。ラリーは病気ではなく、会社からいなくなるわけではない。大きなビジョンを掲げ、クラウドを引っ張り、クラウドのリーダーになることに力を注ぐ。そして勝ち続ける。この戦略にはまったく変更がない。オラクルの課題をあえてあげるとすれば、それは、すばらしい戦略をどうやって実行するのかという点である」

 さらに、「オラクルは13万人の社員を抱える組織。1人で行なうスポーツではなく、チームで行なうスポーツのようにして戦っている」と語り、CEOが1人、社長が2人の体制を、会長が1人、CEOが2人の体制へと肩書きを昇格させただけともいえる。CFO不在体制も、結局は、キャッツ氏がCEOの立場からこれを担当する。2人のCEO体制だからこそ、CEOでもCFOの役割を兼務することができるというわけだ。

 こうしてみると、ハード氏が語るように、「なにも変わらない」というのが確かなところなのかもしれない。

ナンバーワンクラウドベンダーへの強い意欲

 では、なぜ経営体制に変化がないのに、今回の人事が実施されたのだろうか。そのひとつの答えが、エリソン氏が就任した「CTO」というオラクル初の肩書きにあるのではないだろうか。

 開催初日に行なわれた基調講演においてエリソン氏は、「Modern Cloud」をテーマに、講演時間の約9割を使って、クラウドサービスへの取り組みに言及してみせた。「オラクルはナンバーワンのクラウドベンダーを目指す」とし、SaaSで先行しているセールスフォース・ドットコムの名前を、講演中に10回もあげながら、オラクルの優位性を強調してみせた。

講演時間の約9割を使って、クラウドサービスへの取り組みに言及したエリソン氏

 そして、「オラクルは、SaaS、PaaS、IaaSのすべてを提供する。これは、オラクルが30年前に顧客と約束したこと」と発言し、「クラウド環境へと移行するにあたり、ユーザーはかつての世代交代時と同じように、自分たちのアプリケーションや自分たちのデータを、自分ではコードを書き換えずに、次の世代の技術に移したいと考えている。その要望に常に応えてきたのがオラクルである。これは30年前からの約束。だからこそ、SaaS、IaaS、PaaSを自ら提供し、オンプレミス環境から簡易な操作でクラウド環境へと移行できるようにした」とする。クラウドへの出遅れが指摘されたオラクルが、30年前からの顧客との約束という観点から、クラウドへの取り組みを語った点にも、エリソン氏の意地が見え隠れする。

 そして、「どんなJavaアプリケーションでも、どんなデーベタースアプリケーションでも、ボタンをひとつ押すだけで、オンプレミスから、WebLogic Javaプラットフォームによる、近代的なクラウド環境へと移行することができる。そして、クラウドからオンプレミスへと柔軟に戻ることもできる。これはオラクルだけができるものである」と、むしろ先進性を強調してみせた。

 基調講演では詳細な技術情報にも触れた。それはクラウド戦略だけでなく、同時に発表したハードウェア製品でも同様だった。そして、開催3日目に開催した基調講演では、「さらに詳しい話をする」とも語ったほどだ。まさにその姿はCTOそのものだ。

 昨年の講演では、老眼鏡を手にするシーンもみられ、やや老いた雰囲気を醸し出してもいたが、今年の基調講演ではそうしたシーンは見られず、広い壇上をコーラ片手に講演をしてみせた。CTOへの就任は、今年70歳を迎えたエリソン氏若返りへの処方箋だったのだろうか?

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