マイクロソフトリサーチの大きな実績
マイクロソフトにとって、MSRの存在は重要な意味を持つ。
MSRで開発された基礎研究および応用研究の成果は、マイクロソフトの製品に反映されている。さらに技術、科学分野における研究実績は、1000以上の成果として論文発表され、社会や人道的な分野でも成果を挙げている。また、インターン制度を活用した人材育成や、大学をはじめとする学術機関とも共同研究を行なってきた。
マイクロソフトリサーチ シリコンバレーは、各種アルゴリズムの研究や、マシンラーニングに関する研究を行なってきた拠点で、その成果は、クラウド上で提供されるMicrosoft Azure Machine Learningにも活用されているようだ。
マイクロソフトは、マシンラーニング技術を重要な技術のひとつに位置づけており、この技術を、Windows Phoneで提供される「コルタナ」(Curtana)の音声認識からベストな回答を導き出す技術や、Xboxにおけるゲームやミュージックの認証分析などに応用している。
そうした意味でも、マイクロソフトリサーチシリコンバレーの閉鎖は、研究者の解雇は予想しなかったことでもあった。
Trustworthy Computing部門も人員削減
そしてもうひとつの驚きは、Trustworthy Computing部門も、人員削減の新たな対象に含まれたことだ。
マイクロソフトは、「Trustworthy Computing」の名称で、信頼性の高いコンピューティング環境の構築に2002年から取り組んでいる。当時、CEOを退いてチーフソフトウェアアーキテクト務めていたビル・ゲイツ氏が提唱したTrustworthy Computingは、Nimda(ニムダ)、Code Red(コードレッド)などのコンピュータウイルスが猛威を振るい、セキュリティに関する多くの被害が発生していた事実を問題視。PC環境を根本から見直し、信頼できるコンピューティング環境を実現するため開発手法を導入することに取り組んだのが発端だ。
開発チームは、すべての開発作業を停止し、製品や開発環境を見直し、現在だけでなく将来の脅威に対して対応できるコンピューティング環境の実現に取り組んだ。当初、2003年に出荷すると予定されていたWindows Vistaが、2006年までずれ込んだのは、Trustworthy Computingへの取り組みが影響しているといわれる。
現在のマイクロソフト製品が、脆弱性に対して迅速に対応する基盤が構築されているのも、このときの取り組みに端を発している。
それだけ重要な組織にも、今回の人員削減計画が及ぶことになるわけで、まさに「聖域なき改革」といえるものだ。
さらに次が用意されている
この人員削減計画は、さらに次が用意されている。逆算すれば、あと3000人ほどの削減対象が明らかになっていないからだ。聖域なき人員削減計画がどんなこところに及ぶのか。これからも目が離せない。
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