AQUOS CRYSTALを作った男たち!
開発者へ製作秘話を聞いた
ソフトバンクから先日発売されたばかりの「AQUOS CRYSTAL」(シャープ製)。シャープが推し進めているEDGESTデザイン以上に狭額縁なディスプレーと、オーディオ業界の雄・Harman/Kardonとコラボしたサウンド機能がウリである。なお、このモデルから「303SH」などメーカーと型番の表示がなくなった。そして、ソフトバンク傘下となったアメリカのSprint社でも販売され、ソフトバンク、シャープともに海外戦略を展開するための重要な製品となっている。現在、ソフトバンクにのみ投入されていることを考えてもこのモデルは、両社にとって特別な意味を持っているだろう
今回、AQUOS CRYSTALを開発したシャープの関係者にお話を聞く機会があったので、このモデルの開発秘話を聞くとともに、疑問などをぶつけてみた。
狭額縁といえばシャープ独自のEDGESTだが、今回はEDGESTとは違うのだろうか。シャープの通信システム事業本部 パーソナル通信第三事業部 商品企画室 室長 澤近京一郎氏に聞いた。
「EDGESTデザインはおかげさまで進化を続けていますが、これはフレームそのものをなくすデザインとして企画されました。これまでイベントなどで展示はしていたのですが、EDGESTとの差別化をしつつ商品化できないものかと。協議を進めていく中で、ソフトバンクさんが気に入ってくれて、今回海外向けも含めてリリースとなりました」
AQUOS CRYSTALはたしかに狭額縁というより、フレームレスと言ったほうがふさわしい。ただ、EDGESTはEDGESTで別ラインで続けていくという。
見れば見るほど画面を握っているかのような錯覚におちいるほどのフレームレスデザイン。技術的にはどうやってこのディスプレーを実現したのだろうか? 同社の通信システム事業本部 要素技術開発センター システム開発部 主任研究員 前田健次氏に解説してもらった。
「まず、液晶の周囲には画面表示をしない部分があります。ここには液晶を駆動させる回路が入っているのですが、技術的に従来モデルより60%ほど小型化できたんです。これが大きいですね。そして、従来モデルに使われていたスマホのパーツ、タッチパネルやバックライトといった部品をすべて見直して、AQUOS CRYSTALに最適化しました。この2点がフレームレスを実現できたポイントです」
ディスプレーまわりの技術が格段に進化したという。また、プロダクトビジネス戦略本部 デザインセンター 通信デザインセンター 所長 小山啓一氏はこのパネルの技術サンプルをひと目見た瞬間になんとしてでも商品化したくなったという。だが、商品化への道は険しいものだった。
「技術サンプルに絵が一枚映っているのを見た時に、衝撃が走ったんです。ディスプレー全体に絵が表示されていて。すぐに商品化を検討しました。僕が受けた衝撃を、ユーザーのみなさんにも体験してもらいたかったんです。
このディスプレーパネルを斜めにカットすると、平面と斜面の部分に映像が出てくるんですが、クリスタルの中から映像が浮かび上がるように見えるんです。このレンズパネルを実現するために開発当初は2mmの厚さのパネルを使っていましたが、製品版では1.5mmになっています。薄さとデザイン面を両立させるために、プーレン氏が頑張ってくれました」
(次ページでは、「背面パネルへのこだわり」)
