小売り最大手のWalmartは拒否を表明
Appleは巨大流通企業相手に主導権を握れる!?
モバイル決済サービスで最も難しいところは、エコシステムの構築だろう。ユーザーは単にApple Pay対応機種を持っているだけでは不十分で、Apple Payを利用できるクレジットカード、利用できるショップがあって初めて決済できる。たとえばiPhone 6/6 PlusやApple Watchとやり取りするためにはNFCリーダーが必要となり、ショップ側からすれば追加投資を意味する。
Appleは発表時、Bank of America、Capital One Bank、Chase、Citi、Wells Fargoが発行するクレジットカードとして、American Express、MasterCard、VISAに対応するとした。これらだけで、米国のクレジットカード決済高の83%をカバーするという。利用できるショップとしては、Apple Storeに加え、デパートのMacy’sやBloomingdale’s、McDonald’sやSubway、スーパーのWhole Foods MarketやWalgreensなどが名を連ねている。合計で22万店以上で利用できるという。
一方で名前が無い有名どころも多い。小売り最大手のWalmartをはじめ、Target、Best Buy、7-Eleven、Searsなどだ。これらはMerchant Customer Exchange(MCX)という新企業を立ち上げており、モバイルを利用した決済サービス「CurrentC」(関連サイト)を9月4日に発表したばかりだ。
CurrentCはNFCは利用せず、iOSとAndroidのアプリとして展開する。クレジットカードを利用した決済が利用でき、クーポン管理やポイント機能もあるようだ。2014年中に一部でパイロットをスタートし、2015年に全米ローンチにこぎ着ける計画だ。フル実装されると、11万店で利用できるようになるとしている。
Apple Payに参加すると、取引において手数料を支払うことになる。それならば、自分たちで仕組みを作り、プッシュしようというところだろう。Softcardがキャリア主導なら、MCXはショップ主導というところだろうか。ただし、Appleのようにハードウェア/ソフトウェアを含めた一貫性のあるサービスではなく、ユーザーにとってのわかりやすさや使いやすさを考えると、やはりAppleに一票ということになりそうだ。
だがApple Payは金融機関と小売りを巻き込む壮大なスキームだ。Appleにしてみれば、iTunesで音楽業界を巻き込んで主導権を握った以上のイニシアティブとなる。Apple Payは10月に米国でスタートとなる(日本にいつやってくるのかは明かされていない)。Cook氏は手腕を示すことができるのかに注目だ。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
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