外資企業への圧力が強まる中、法規制順守も重要ポイントに
続いて山口氏は、企業に対する法規制について説明した。たとえば独禁法当局がマイクロソフトやメルセデスベンツへの調査を行うなど、昨今、中国政府は米国企業を初めとする外資企業への圧力を強めている。「外資規制が強まっているため、これまでは見逃されていたとしても今後(法令違反を)突かれる可能性がある。注意すべき」(山口氏)。
中国で特筆すべきIT関連法規としては、インターネットアクセスログの保持義務(60日間)、海外製暗号化製品の使用規制、中国国内でのWebサイト運営登録義務などがある。さらに、上場企業には内部統制(C-SOX)の取り組みが義務づけられているが、これも「(政府の方針変更で)急に対象が拡大する可能性もあるため」(同氏)非上場企業でも対応しておくことが好ましい、と山口氏は述べた。
セキュリティリスクの高さも頭の痛い問題だ。PCやスマートデバイスのマルウェア感染率は、日本とは比較にならないほど高い。その背景には、ソフト、音楽、映像などの不正コピーが蔓延している社会状況がある。「信頼できるベンダーから購入しないと、コピー品を売りつけられることも」(山口氏)。さらに機密文書の持ち出し(情報漏洩)など、従業員自身の意識や倫理観の変化がまだまだ追いついていない面もある。
特殊なインターネット環境に対応するソリューション/サービス
このように、中国のインターネット環境は色々な意味で“特殊”である。IIJではこれまで培ってきた知見やノウハウに基づき、日本企業が安定して、安全にインターネットをビジネス活用できるように、多くのサービス/ソリューションを提供している。
その基盤となるのが、上海にあるTier 3相当のデータセンターを拠点として展開するIIJ GIO CHINAサービスだ。これは仮想サーバー/物理サーバーを提供するホスティングサービスだが、前述した「南北問題」を解消するための特別なゲートウェイを備えたネットワーク構成となっており、南北どちらのキャリアからでも遅延の少ないアクセスが可能になる。そのため、中国市場向けにWebサイトを公開する日本企業だけでなく、中国企業からも引き合いがあるという。
さらに、このインフラを活用し、日本に設置された業務システムへのアクセスを快適にする「ゲートウェイサーバソリューション」、日中拠点間の「大容量ファイル転送ソリューション」も提供している。IIJ GIO CHINAから日本へは2キャリアの回線(2経路)で接続しており、遅延や揺らぎの少ない最適な経路を選択する。さらに日中間接続にIP-VPNを利用することで、グレートファイアウォールによる検閲の問題も回避できる。
そのほか、従業員の不正なネットワーク利用や情報漏洩の抑止サービス、クラウド型のマルウェア対策、ソフトウェアライセンスのワンストップ提供、Webサイト公開や暗号化製品利用時に必要な当局への申請支援など、日本企業が進出するうえで問題となりそうなポイントを押さえた支援を展開している。
山口氏は、IIJでは日本と中国の営業/技術スタッフが緊密に連携して顧客支援に当たる体制をとっており、これから中国進出する企業からすでに進出している企業まで、幅広いケースの相談に応じられると強調し、セッションを締めくくった。