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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第50回

Apple Watchはどのように浸透するか?

2014年09月26日 09時00分更新

文● 前田知洋

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デジタル・ヘルスブーム到来

 Appleのプロモーションビデオでもわかる通り、アメリカ人は健康大好き、フィットネスが大好きです。Nikeの手首装着型フィットネストラッカーのFuelBandや、Nikeのシューズに装着してiPodにデータを送信する小型トラッカーと連携する、「Nike+」のプラットフォームには2800万人が登録しています(2014年4月時点)。

 日本でも、テレビ通販でお馴染みの「腹筋鍛えるマシン」とか、ダイエット食品、サプリメントなどを見ると、潜在的な健康管理の需要は十分にありえます。ただし、現状は、健康でスリムになるシステム(生活習慣)よりも、メソッド(器具やサプリ)の市場が活発です。しかし、システムにシフトするのは時間の問題かも。

Touch IDとの組み合わせで支払いができるApple Pay。承認の方法は発表されていないがApple Watchでも可能

爆発力が期待されるApple Pay

 日本で普及しているFeliCa(非接触型通信方式)とは少し異なりますが、Apple WatchにはNFC(近距離無線通信)が搭載されます。その機能を利用したApple Payは、クレジットカードなどの代わりになる技術。特に注目するポイントは、Appleがクレジットカード番号や購入履歴などのデータを収集しない(と宣言した)こと。これ、Appleが良い人ぶっているわけではなく、情報漏洩を視野に入れた非常に賢いリスク管理になっています。

 さらに言えば、Apple Payは、販売店にはカード番号も伝えず、その取引固有の番号を発生させる方法。カード番号や名前が販売者に漏れないという利点があります(もちろん、配送を選んだら、名前や住所は伝わりますが…。笑)。FeliCa以外のISO準拠のNFCは、駅の改札など、瞬時に大量な人を処理をするのは苦手ですが、もしかすると、iPhoneに装着する、NFC(ISO準拠)/FeliCa変換アダプタが日本では登場するかも(まぁ、セキュリティにかかわることなどでAppleの認可は下りないかもしれませんが…)。

 いずれにしろ、Apple Payは、クレジット情報にまつわるトラブルを回避できるひとつの解決案。クレジット会社にとっても、カード詐欺、情報漏洩などによる損失額もバカにできません。ユーザーだけでなく、社会全体でもApple Payなどの新しい導入に追い風と言える状況とも言えます。考えてみれば、現状のクレジットカード、プラスチックの板に付いた、磁気のストライプでデータをやり取りするなんて、かなり時代遅れなデバイスです。

 このあたりは、業界基準の守りが堅い日本市場ですが、おそらく、日本では外資系ファッションブランドの店頭から端末が普及しはじめて、あっという間に浸透しそうな気がしています。

 余談ですが、すぐにじゃなく2015年にApple Watchを投入するのは、デベロッパー(アプリ開発者)のためのタイムラグのためだと密かに推測しています。そんなところも、アウトソーシングの上手い、Appleらしい戦略かと。

 9月9日の発表当日に書いた記事「近い将来、iPhone 6にも18金のモデルが」も合わせてご覧いただければ幸いです。

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 2.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

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