パートナーから見たkintoneビジネスの実情
もう1つ紹介されたのが、エコシステムだ。エンドユーザーが自ら使える簡単さをアピールしていた当初に比べ、現在のkintoneはカスタマイズ性やAPIの拡張が進んでいる。そのため、サイボウズもパートナーによるソリューション拡充に力を入れており、パートナーからのアプリ提供は24社47アプリにのぼるという。
発表会では、kintone向けクラウドサービスを開発するサイボウズスタートアップスの事例が紹介された。サイボウズスタートアップスは、スマートビジネス向けのクラウドサービスを開発するサイボウズの子会社。同社の山本CEOがサイボウズから株を買い取ったことで、今年からサイボウズの連結子会社から外れた立場で、kintone向けのアプリを追加している。
今回紹介された「プリントクリエイター」はkintone内のデータを帳票上に配置し、印刷できるようにするサービス。訪問説明なしで、ホームページの問い合わせのみだが、徐々に販売も伸びているという。「スマートフォンアプリは競合も多く、なかなかつらかった。kintoneはまだまだ小さいが、出始めて競合も少なく、2年後くらいにはプラスに持っていける」とのことで、iPhoneのプラットフォームより手堅いと語った。
kintoneの成功が確信に変わってきた
開発者向けの施策としては、2014年の4月にはdeveloper networkをオープン。外部パートナー(ICTコミュニケーションズ)からは「kintone university」というトレーニングサービスも提供されるようになった。さらに有志による勉強会である「kintone Cafe」が全国で開かれるようになった。
当初、直販メインだったkintoneだが、現在はパートナー販売の比率が45%に達している。しかも、安価で設計が容易なkintoneでは「工数による見積もり提示」「訪問や常駐」「要件定義と完成品の差異」「社に戻って返答するなどのレスポンスの悪さ」など従来型のSIと異なり、短納期やチケット制メニュー、定額制料金などの新しいSIビジネスがスタートしているという。
実際、ジョイゾーのようにお客様に来店してもらい、その場でモックアップを作るといった新しいSIサービスも登場しており、下請け構造のSIビジネスに少しずつ地殻変動を起こしているという。「プラットフォームとしてユーザー管理もディレクトリ連携も用意されているし、GUIでの設計も可能なので、まずは開発生産性が高い。作る部分が最小限で抑えられる。販売生産性は未知数だが、kintoneと共に伸びていくと思う」(青野氏)。
「長らく残りの経営者人生をkintoneに賭けると言ってきたが、成功が確信に変わってきた。今後も妥協せずに投資を続ける」と語る青野社長。クラウド時代のエコシステム、国産クラウドの可能性、そして新しいSIビジネスの創造など、kintoneのビジネスサイドにも注目していきたいところだ。