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世界をのみこむ日本コンテンツはアイドルとインディーズが作る

2014年09月11日 16時00分更新

文● 腰 裕人(Hiroto KOSHI)

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 セミナー「日本のコンテンツビジネスとテクノロジーの未来予想図」が8月28日、高田馬場ラーニングセンターで開催された。主催はopnlab。登壇者は、ヤフー マーケティングイノベーション室の志村一隆氏、大日本印刷ABセンターの池田敬二氏、国際大学GLOCOM客員研究員の境 真良氏の3名だ。動画や電子書籍、アイドルと、それぞれ違った角度から日本のコンテンツについて語った。


動画制作の拠点はアジアにすべき

「欧米にいってマネするよりも、アジアにいけ」──志村氏は、この夏にアジア諸国を巡って強い刺激を受けたという。「中央が吹き抜けになったショッピングモールや、日本の若者もやっている自撮(自分自身の写真を撮ること)をよく見かけた。ほとんど日本と一緒だ」と語り、クアラルンプールでは街中にデジタルサイネージが設置され、台北のタクシーではバックシートでテレビが見られたそうだ。

 アジア諸国では、日本のコンテンツが人気。中でもキティちゃんの人気が高く、「キティショップはおしゃれなデートスポットとなっており、日本のピューロランドに行きたい人が増えている」という。さらに、バンコクでは日本をイメージしたドラマが作られるなど「日本」そのものがコンテンツになっている。ベトナムをはじめ、ミャンマーやカンボジアといった新興国には自国のコンテンツが少ないため、これから発展する現地に制作スタジオをつくることも検討していいだろう。

Shimura

ヤフー マーケティングイノベーション本部の志村一隆氏。水墨画家でもありYouTubeに動画を投稿している。


既存メディアはインディーズに壊される

 池田氏は「電子書籍におけるインディーズムーブメント」について、「自分で作品をプロモーションする道具も増えている。これからは自費出版ではなくセルフパブリッシング(自己出版)の時代だ」と語る。電子出版市場は好調だ。紙の出版物の売り上げが下がる一方、インプレス総合研究所の調査によると電子出版市場は1000億円を突破し、2018年には3000億円を超えるという。

 例えば、今年の4月にサービスを開始したメディアプラットフォーム「note」は、SNSやブログのように写真や文章、イラストなどのコンテンツを投稿して販売できる。池田氏は「noteがあれば出版社なしでもビジネスができる。賽は投げられた。アマチュアやインディーズ作家が既存のメディアを揺れ動かすのではないか」と新しい時代を予見する。

Ikeda

大日本印刷ABセンターの池田敬二氏。作曲や演奏などインディーズ活動にも積極的に取り組んでいる。


アイドルは世界を平和にする

 境氏のテーマは「アイドルの時代~メディア論と消費社会論と公共政策論の交差点」。メディアの変容と共に、アイドルに求められる資質も変化している。「映画の時代は美しいアイドル、テレビの時代になると欠点のある女の子、そしてネット時代はプロだ」と境氏は語る。プロとのアイドルといっても、現代に求められているのは、映画時代のような美しさではなく、可愛くて歌って踊れる実力派なアイドルだ。

 また各国の不平等度を表す所得のジニ係数を比較すると「日本と韓国の不平等度は同じくらいだが、日本が所得を再配分しているのに対して韓国はほとんど再配分をしないため、結果的に日本より不平等度が高くなっている」と指摘し、「再分配しないと中産階級が崩壊して国家主義になりやすい。だが、アイドルは国家と正反対の概念。私たちが、私たち自身として楽しんで自信を持てるツールがアイドル。世界中がアイドルに萌えれば、楽しく生きられる社会をつくれるのではないか」と、アイドルの可能性について説く。コンテンツビジネスとしてのアイドルが世界平和に貢献する日も遠くはない。

tsutsumi

国際大学GLOCOM客員研究員の境 真良氏。マンガにも造詣が深く「このマンガがすごい!」のアンケート回答者も務める。


 それぞれの講演が終わった後にトークセッションがあり、海賊版の功罪やセルフパブリッシングの現状、今後のテレビとネットの在り方などが多くの質問と共に語られた。

Seminar

セミナーでは会場が笑いに包まれるシーンもあった。


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