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イスラエルITいろはにほへと 第7回

半導体ビジネスを成功させる5つの鍵

2014年09月09日 16時00分更新

文● 加藤スティーブ(ISRATECH)

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相澤智哉

MegaCips Technology Americaの戦略マーケティング担当副社長の相澤智哉氏。2004年ころからイスラエルのスタートアップとチップビジネスを推進

半導体大手のインテルが米国外では最大の工場を展開するなど、イスラエルの半導体周辺ビジネスの強さは知られているものの、その実態はあまり知られていない。今回はそんなイスラエルの半導体ビジネス周辺事情を、MegaChips Technology Americaの相澤智哉氏からのリポートを通じて届けたい。以下はその前編だ。


メガチップスがイスラエルの半導体企業と付き合い始めて早10年。もともとはASICビジネスを求めてイスラエルを訪れたが、マーケティング活動を通してイスラエルには高いポテンシャルとタレントを有する通信系の企業が多数あることに気づいた。そして、アプリケーションに必要とされるSerDes(Serializer/Deserializer)やAFE(Analog Front End)といったアナログ信号とデジタル信号を混在させる(ミックスドシグナル)技術の開発を通して、彼らの成功への執着の強さや、信頼に基づくパートナーシップの重要性を学ぶことができた。

幸いにも何社かの素晴らしいパートナーに恵まれたこともあり、これまで複数のプロジェクトを成功させられた(当然失敗したプロジェクトも複数)。この背景には、イスラエル人の類まれなる才能とバイタリティーがあったことに疑いの余地はなく、僭越ながらその一端を紹介したいと思う。

そもそも、通信系のチップビジネスを成功させるためには、

 (1) 国際標準化団体で仕様策定をリードし、自らの仕様を最大限入れ込み、かつタイムリーにまとめ上げる能力
 (2) チップベンダーから最終顧客までのサプライチェーンを構成するメイン企業への強いコネクション
 (3) 資金調達力
 (4) 事業を成功に導くのに十分なタレントとチーム
 (5) 参入タイミングと運

──が鍵になる。

イスラエルには(5)を除くすべてが、しかも数人のコアメンバーでほぼ完結するような基盤が多数存在する。同様の基盤はシリコンバレーにも存在するのだろうが、イスラエルの場合、大半が「友人レベル」という狭いコネクションでチームが完結するほど、タレント同士のつながりが濃い。イスラエルというクローズドな社会にあって、「濃いつながり」こそがイスラエルの強みの源泉だと見ている。

イスラエルには「タルピオット」という少数精鋭のエリートコースがあり、筆者が関わったスタートアップA社のファウンダー兼CEOはこのタルピオット出身。そのコアメンバーも兵役時代に特殊任務を担ったグループの出身ということだった。こうした濃いタレントのつながりが、ビジネス成功の一因となった端的な例だろう。ちなみに、弊社はこのスタートアップと共に弊社のSerDesを搭載したチップを開発。このチップを使ったシステムが、日本の大手電話会社のアクセスシステムに大量採用されている。

次回は、イスラエルスタートアップのマインドについてリポートしたい。


筆者紹介──加藤スティーブ


著者近影

イスラエルの尖った技術に着目して、2006年にイスラエル初訪問。2009年にISRATECHを設立し、毎月40〜60社のスタートアップが生まれるイスラエル企業の情報を日本へ発信し続ける。2012年にはイスラエル国内にも拠点を設立。イスラエルのイノベーションを日本へ取り込むための活動に着手する。ダイヤモンドオンラインにて「サムスンは既に10年前に進出! 発明大国イスラエルの頭脳を生かせ」を連載。



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