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最終段のバッファーが、のびのびとした温度感を導く

高級USB DACに新たな選択肢、マランツ「HD-DAC1」

2014年09月03日 10時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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HD-DAC1。コンパクトなフットプリントに上級機の機能が凝縮されている。

 マランツはUSB DAC機能を内蔵したヘッドフォンアンプ「HD-DAC1」を10月上旬に発売する。価格は11万6640円。SACDプレーヤー搭載のヘッドフォン出力の質の高さで定評のあるマランツだが、単品のヘッドフォンアンプを発表するのは初。

NA-11S1で培った技術を投入

 幅25×奥行き27×高さ9cmとコンパクトなサイズに、ネットワークプレーヤー「NA-11S1」や「NA8005」など、上級機で培った高精度のデジタルオーディオ回路を詰め込んでいる。DACはマランツのSACDプレーヤーなどで実績のある、シーラス・ロジックの「CS4398」。最大5.6MHzのDSD信号(リアUSB)および24bit/192kHzのPCM信号(USB、光、同軸)の入力に対応する。フロントUSBからはiPodデジタル入力が可能。

HD-DAC1
デジタル基板。基板の右下、縦にずらりと並んでいるのがデジタル・アイソレーターのチップだヘッドフォンアンプ部分。オペアンプなどを使用するのではなく、ディスクリート構成となっている

 DACの前段に設けられた「デジタル・アイソレーション・システム」や、位相雑音が非常に低い「超低位相雑音クリスタル」の利用、さらに44.1kHz系統と48kHz系統用に2種類のクロック回路を用意するなど、デジタル回路の高周波ノイズがアナログ回路に干渉したり、ジッターによる悪影響を排除している。デジタル/アナログ変換部分の構成はNA8005とほぼ同等だが、デジタル・アイソレーターの数はNA8005の6個(12回路)から、8個(16回路)に増やした。これはUSBなどのデジタル入力に加え、コントロールマイコンからくるミュートや音量調整用の信号に混入した高周波ノイズに対策するためだという。

こだわりを持って開発されたヘッドフォンアンプ回路

 アナログオーディオ回路に関しては、新開発のヘッドフォンアンプが注目。後段に「無帰還型バッファーアンプ」、前段にマランツ独自のディスクリートアンプモジュール「HDAM SA2」による「ゲイン切り替え式電流帰還型アンプ」を置いた特徴ある設計となっている。

電源用のカスタムブロックコンデンサーやオーディオ出力回路用のフィルムコンデンサーなどグレードの高い部品を使用(左)。シールドケース入りの大容量のEIコアトランスなど、アナログ回路にはかなりこだわっている印象(右)

 ヘッドフォンは20~600Ωと広いインピーダンスに対応する。前段では電圧増幅で、LOW(3.7倍/11dB)、MID(7.7倍/18dB)、HIGH(16倍/24dB)と3段階のゲインを切り替え可能。一方後段では増幅をせず、ヘッドフォンのドライバーを駆動させるのみとした。正確な増幅とドライバーの駆動というアンプに求められる2つの要素を分業すると同時に、ドライバーからの逆起電力(動かしたドライバーユニットが反発して戻ろうとする際に生じる電力の逆流)が前段に干渉することを排除することが目的。

レベルダイアグラム。前段でゲイン調整し、後段はヘッドフォンのドライブに徹する

アンプはアンプであること、Hi-Fiアンプのノウハウを注入

 実はこの発想は単品のHi-Fiアンプを開発する途中で得たものだ。

 大型のスピーカーを駆動するアンプでは、入力した信号を一度に増幅することは難しいため、最初に何段階かに分けて電圧増幅し、スピーカーを駆動する最終段で電流増幅をするアンプが多い。

フラッグシップアンプ開発の過程で生まれたゲイン0dBの無帰還型バッファーアンプの発想。
マランツ音質担当マネージャーの澤田龍一氏

 しかし澤田氏は「必要なゲインは前段で取るのが究極」「最終段は0dBのゲインとしてスピーカーのドライブに徹することを目指していた」とする。たとえばフラッグシップセパレートアンプの「SC-7S2」「MA-9S2」では最終段のゲインは6dB(わずか2倍)しかない。しかし大型のアンプで最終段を0dBのゲインにするためには、パワーアンプの後ろにさらに最終段を追加する必要などがあり、回路が大規模になりすぎるため困難だった。

 この思想を実現するチャンスが図らずもヘッドフォンアンプの開発という形で巡ってきたという。ヘッドフォンアンプであればプリメインアンプに比べて必要なゲインは圧倒的に少なく、10~20dBあればいい。最終段に必要な電力もmWオーダーと低いため、0dBバッファーの最終段とその前にくる電圧増幅段の切り離しも比較的容易になる。

ディーアンドエムホールディングスのConsumer Strategic Business Unitプレジデント、ティム・ベイリー氏も登壇

 とはいえその実現には回路設計の難しさがあった点も確か。HD-DAC1の最終段は無帰還型となる。負帰還によって特性を改善する化粧ができないため、回路の裸特性の高さが求められる。結果として、0.0012%(1kHz)と低い歪み率と110kHzの超高域でも-30dBと無帰還型アンプとしては驚異的な性能を得られたが、その開発には大きな苦労があったのだろう。

 ちなみに、DSD入力の信号はPCMの2.3Vに対して1.6Vと低いため、CS4398にはDIRECTとPCMと同等のレベルで出力する2つのモードがあるが本機ではDIRECTモード固定で使用している。NA-11S1以降はDIRECTモードを使用しており、それに沿った形だ。

NA8005を超えるディティール

 「アンプはアンプであること。この10数年、マランツのHi-Fiアンプが目指したものをより推し進めて詰め込んだ」製品であり、「結果的に3次元的な空間の再現性や、ディティールに加えて、温度感があり、のびのびとしたサウンドとなっている。これが0dBバッファーの効果。アンプのパートはヘッドフォンアンプだからというのではなく、Hi-Fiアンプとしてやりたかったことをする機会が与えられた」と澤田氏は話す。

ヘッドフォンアンプとしてだけでなく、2系統のアナログ出力を持ち、USB対応のDACとしてHi-Fiシステムの中に取り入れることもできる。

 HD-DAC1の本体にはヘッドフォン出力のほかに、可変および固定のアナログ出力(アンバランス)も装備されている。澤田氏個人の見解では「(ほぼ同等回路のNA8005と比べて)HD-DAC1のほうがディティールが出ている気がする」とのこと。ネットワーク機能を持たず、ノイズなどの影響を抑えられるほか、通信を受けるために常時デジタル回路を走らせる必要がないことなどが影響しているのではないかという。

 なお、最近の流行としてはヘッドフォンのバランス駆動に対応した製品が増えているが、上述したような凝ったアナログ回路を盛り込んだたため、このサイズではバランス駆動のためにさらにもう一組の回路を入れることはできなかった。トレンドには逆らう形になるが、使い勝手のいいオペアンプでバランス駆動を実現するのではなく、シングルエンドで自分たちが作りたかったアンプを作ることに専念した。

デジタル・アイソレーターを持たない「NA7004」との比較。明らかに差がある。クロックも高精度。しかも2種類搭載。

 筆者個人の感想としては幅25cmのハーフサイズで中央に円形のディスプレーを装備したデザインは、トップローディング方式を採用した「CD23」などにも通じる特徴あるもので好印象だ。かれこれ20年前の製品となるが、ほかに類を見ない特徴あるデザインということもあり、仕事机の脇に置いて今でも使っている。サイズ的にもぴったりであり、機会があれば並べてみたいものだ。

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