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RISING SUN ROCK FESTIVALでの無線LAN構築をレポート

石狩の野外フェス会場に無線LANを!さくらのチャレンジを追う

2014年09月03日 15時00分更新

文● 大谷イビサ/ASCII.jp編集部

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無線LANから「動画を心おきなくアップできた!」

 人数もコストも少なかったため、データセンター内でケーブルを配線したり、会場にAPを設置するといった作業は、すべて石狩データセンターのメンバーが行なった。宮下氏は、「センターのサーバー室から90mくらいケーブルを持ち上げた。重く堅い屋外用のケーブルを引いたので、みんな汗だくだった」と語る。

会場のテント内でケーブリングを行なう宮下氏(写真提供:さくらインターネット)

 とはいえ、屋上での工事だけは業者に依頼した。石狩データセンターと会場との間は300m程度の距離があるため、屋上と会場にアンテナを設置しなければならない。「さすがに15m近い高さの屋根で作業しなければならず、風も強いので危険。しかも建物と木の間で300m電波を通さなければなければならないので、アンテナの調整も難しかった」(宮下氏)と振り返る。

屋外でのアンテナ設置だけは業者に依頼した(写真提供:さくらインターネット)

 こうして苦労して作った無線LANの利用数は3日間で507。約6万という入場者数を考えれば、決して多くはないが、積極的な告知をしていなかったわりにはまずまずという数字だ。また、会場で測った結果、下りで3~5Mbps程度は出ており、他の無線LANよりも高い数値をキープできたという。ちなみにもっとも接続数が多かったのは、2日目の午後にステージに上がったGotch(アジアンカンフージェネレーション)の時間帯だったという。

 APを2台構成にしたのも勝因だった。太陽光発電とバッテリで動作するPoggimoは、消費電力を抑えるため、CPUのクロックを低めに落としている。性能やキャパシティという点が高いわけではないが、「演奏後にトラフィックがどかんと来たらどうしようと思っていたが、むしろ出待ちの時間にゆるゆる上がっていく感じ。うまい具合に2つで分散してくれたようだ」(伝法氏)という。

 データで調べたわけではないが、利用で多かったのはやはりTwitter。紙で配られているタイムテーブルをスマホでチェックしたり、動画の投稿を心おきなくできたという声もあったとのことで、3G/4Gとは異なる価値を提供できたようだ。

つないでからの価値を訴求していきたい

 今回は初参戦ということで、さくらインターネットも手探りな部分が多く、反省点もあった。「特別な看板を出したわけでもなく、積極的に告知したわけではない。SNSで関心を持ってもらった感じ」(宮下氏)とのことで、もう少し宣伝してもよかったというのが感想。逆に伝法氏は、「私は他の実証実験で告知の重要性がわかっていたので、きちんと提案すべきでした」と反省する。

「使ってもらってなんぼなので、もう少し宣伝すればよかった」(宮下氏)

 次は単につないでもらうだけではなく、つないでどんな価値を提供できるかが鍵になるという。最近は多くのベンダーが無線LANと連携するロケーションサービスの提供に動いているので、こうした機能を活用すれば行動分析が利用できる。積極的な宣伝活動やWebによるアンケート回収なども可能になるだろう。また、音楽配信、電子チケットなどで、イベント主催会社にメリットを提供するソリューションも考えられる。

 とはいえ、「キャリアの力を借りず、自分たちだけでできたのは大きな自信になった」と語る宮下氏。その自信と経験を元に、来年さらなるパワーアップを期待したい!

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