独立行政法人 農業生物資源研究所(生物研)は8月27日、クモ糸タンパク質を作るカイコの実用化に成功したと発表した。クモの遺伝子を組み込んだカイコを用い、吐出される糸は通常シルクの1.5倍の強度を持つ。
クモの出す糸はカイコのシルクよりも強いことは古来より知られていたが、大量に飼うと共食いをはじめるなどして産業的にクモを飼育して繊維として使うことは実現できなかった。微生物を応用してクモ糸のタンパク質を合成することには現在成功しているが、繊維として大量生産するにはカイコを使うのがコスト的にも利点が大きい。
生物研では、オニグモの縦糸を作る遺伝子の一部を遺伝子組み換えでカイコに注入する研究を2007年より進め、改良を続けて実用レベルの品種を作り出すのに成功した。クモ糸シルクは通常のカイコの糸と比べて1.5倍の切れにくさを持ち、さらに繭玉から糸として引き出して紡績するまでの工程すべてを従来のシルクと同様の機械を利用できる。
生物研では、今後さらに強度や機能性を高めたクモ糸シルクを開発し、手術用縫合糸や防災ロープといった特殊用途での利用、蛍光シルクなどを産出するカイコ品種と掛けあわせてより高付加価値のシルクを開発するという。