このページの本文へ

スタートアップが注目するクラウドソーシングのリアル

2014年09月01日 07時00分更新

文● 寺林 暖(Dan Terabayashi)/アスキークラウド編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 企業がインターネットを通じて不特定多数の人に業務を発注する、クラウドソーシングの普及が進んでいる。自分のスキルや時間の使い方に合わせて仕事を選べる、新しい個人の働き方としても注目され、今年5月には業界団体である一般社団法人クラウドソーシング協会が発足。矢野経済研究所の調査では、2013年度の流通金額規模は前年度比101.7%増の215億円。業界全体で認知度向上や利用促進への取り組みが進む結果、2018年度には1820億円にまで拡大すると予測されている。

 クラウドソーシングを積極的に活用している企業の中には、スタートアップも多い。使い方はさまざまだが、魅力の一つは、立ち上げ時に足りない人材を正社員雇用という形ではなく、クラウドソーシングを通じて随時、ニーズに応じて補強できる点だ。

 企業向けの社内SNS日報共有サービスを提供しているgamba!も、クラウドソーシングを積極的に利用している一社だ。2012年12月にベータ版を提供開始して以来、2014年8月時点で累計3600社以上がトライアル申込みをするまでに成長しているが、ベータ版の提供開始当時は、エンジニアでもある代表取締役の森田昌宏社長が一人で開発していた。だが、サービスの規模を広げるためにシステム開発の人員補強が早急に必要になり、森田社長はクラウドソーシングに注目。クラウドソーシングサービスの大手事業者であるクラウドワークスで人材募集をかけた。

日報のために開発された社内SNS「gamba!」。パソコンやスマホ、タブレットのいずれからでも簡単な操作で投稿・閲覧できる。目標を設定して達成状況を見える化するなど、モチベーションを上げて「みんなで続けられる」仕組みが特徴だ。

「我々のようなスタートアップは知名度が低いので、求人活動してもなかなか人が集まらない。知人の紹介を頼っても、1人や2人採用できればいいほう。でも、クラウドワークスで募集をかけたら10人も集まった」(森田社長)

 応募してきた10人の中から2人に絞り込んでシステム開発を手伝ってもらい、クラウドソーシングが使えそうとの感触を得た森田社長は以降、積極的にクラウドワークスを活用。現在では、gamba!の常駐スタッフは森田氏を含めて8人だが、クラウドソーシングを通じて10人が、ウェブサービスやアプリの開発・検証作業に関わっている。

 gamba!のプロダクト開発部の川崎 修氏が挙げるクラウドソーシングのメリットの一つは、従来の人材マーケットではなかなか巡り会えない、スキルの高い人に業務に関わってもらえる点だ。

「クラウドソーシングで仕事を発注すると、実装からリリースまでシステム開発の一連の作業を一人でこなせるような、優秀なエンジニアの方も応募してくれるんです。そのような優秀な方は本業をお持ちの場合が多く、夜など空いた時間を使って仕事を手伝って頂いています。以前であれば休職や転職のようなきっかけでもない限り、我々のようなスタートアップの業務に関わって頂く機会はなかったと思うのですが、今ではクラウドソーシングを通じて仕事を手伝って頂けるので、便利な世の中になったと思います」

gamba!代表取締役の森田昌宏社長と、プロダクト開発部の川﨑修氏。

 クラウドソーシングを使い始めた当初は、応募者とのコミュニケーションに苦労した時期もあったという。

「社内で一緒に働いていれば、不明点があってもその場でお互いに話しかけて解決できると思うのですが、クラウドソーシングでの発注先は地方の方も多いので、チャットやメールでのやり取りが中心になり、空気は読んでもらえません。過去には、仕様書を詰め切れないまま丸投げに近い形で仕事をお願いしてしまった結果、期待した成果物とならない恐れが生じたため、膨大な修正リストを作って頻繁にコミュニケーションをとり、どうにか納品までこぎ着けたこともありました」(川崎氏)

 今では、開発業務を細かいタスクに切り出して発注。エンジニア側で判断しなければならない範囲が小さくなるので、多くのエンジニアにお願いできるようになった。また、gamba!ではスタッフのリモート作業を推奨。リモートでの仕事のやり取りを自ら実践することで、発注を受ける側の気持ちも理解でき、コミュニケーション上、何を注意しなければいけないのか非常に参考になった、と川崎氏は言う。

 森田社長は今後もクラウドソーシングを積極的に活用したいと語る。

「日報共有サービスをお客さまにご満足頂ける形で提供できつつありますが、完成したとは全然思っていません。事業を広げる上で新規の開発案件が増えていくと思うので、今後もクラウドソーシングをうまく使っていきたいですね」


■関連サイト

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中