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デジタルノートを超えたその先にあるもの

清水CEO自らが語る、enchantMOONとは何だったのか?

2014年08月30日 12時00分更新

文● ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長 清水亮

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プログラミングとは何か?

 人間はアナログ情報とデジタル情報を両方同時に扱います。アナログからデジタルへ変換し、またデジタルからアナログへの変換を繰り返します。このアナログからデジタルへの変換を、プログラミングと呼ぶことにしてはどうでしょうか? 私の著作を良くご存知ない方は、ここに飛躍があると感じられるかもしれません。

 今年の3月に上梓した「教養としてのプログラミング講座」のなかで私は、プログラミングはコンピュータの発明以前から人類の手によって繰り返し行われて来たものであり、コンピュータの発明によってそれが純化され、誰にでも扱えるようなった、と論じました。

 ではプログラミングとは何かというと、「誰かを自分の思い通りに操作するための仕組み」です。では「思い通り」とはどういうことでしょうか?

 プログラミングの経験がある読者ならば、これは容易に想像できると思いますが、職業プログラマの多くは、自分で自分が何を作るのか、ということを決めたりはしません。

 まず企画者やSEやクライアントが企画書や仕様書というものを持ってきます。仕様書に書いてあるものを仕様書に書いてある通りにプログラミングすれば仕事完了……だったらこんなに楽なことはないわけですが、実際には違います。

 企画書や仕様書をもとに、「これは実際には何をしたいのか、何をしようとしているのか」ということを解釈し、それを完全無欠な論理の結晶としてプログラムに落とし込んで行くのです。「実際には何をしたいのか」というのは、いわばアナログ情報です。乱暴な企画者ならば「行間を読んでよ」と言うかもしれません。そうでなくても、ドキュメントに完全には書かれていない情報は少なく有りません。

 プログラマーの役割は、企画者が実現したいこと、というもやもやしたアナログ情報をプログラムとして具体的なデジタルデータに落とし込むことです。 それをプログラミングと呼ぶならば、少なくともプログラミングの本質はアナログ情報からデジタル情報へ変換することだと言うことが出来ます。

 これは企画者の仕事や、SEの仕事も、広義にはプログラミングである、と言っているのと同じです。論理の具体化、内容の整理、呼び方はなんでもいいのですが、本質は同じ、つまり、漠然としたイメージを具体的な文章なりパワーポイントなりプログラムなりの論理構造へと変換することです。

 その論理構造への変換をここでは仮に「プログラミング」と呼ぶことにする、ということにすると、人間の知的活動の大部分は、プログラミングであると捉えることができます。漠然としたイメージをハッキリした形にすること、すなわちプログラミング、というわけですからね。

人間とenchantMOON

 人間とは、アナログI/Oを持ったデジタルコンピュータである。このことに気付いたとき、私は人が手書きを欲する理由やenchantMOONがこれから目指していく方向性がおぼろげながら見えてきました。

 enchantMOONがなぜこれほどまでに注目を集めることになったのか、実のところ私にもハッキリとしたことはこれまでわかっていませんでした。もともとこれは私自身が欲しいと思って作ったものだったからです。

 私と同じような考え方の人がそれほど多くいるかどうかということについては自信が持てませんでした。だから私達はこれを通常の仕事と同じように有望なクライアントに売り込んだりするのではなく、自分たちで作るという方法を選択したのです。

 しかし実際にはenchantMOONへ寄せられた期待というのは、私達が想定したものを遥かに超えていました。もしかすると、誰もが漠然と、アナログ情報としての手書きと、デジタル情報としてのコンピュータが乖離しているということに違和感を感じていたのかもしれません。

 ちょっとここでenchantMOONの画面を見てみましょう。

 まず文字が書かれていますね。ここに書かれている文字は一見、手書きが持っている肉感とか質感とかに目を奪われがちなのですが、現実にはこれはアルファベットとかひらがなという記号であって、文字というのはそもそもデジタルデータです。しかし矢印や地図や写真などの図像はアナログで認識して初めて意味をなすものだから、実は本質的にはアナログなんですね。このように手書きで行われるアイデアスケッチとかマインドマップには文字というデジタル的な情報と枠がここにあるとか、こういう並び方になっているというようなアナログ的な情報が同居しています。

 アナログ情報とデジタル情報の同居、これこそが手書きの魅力です。何かをかたちにしていくとき、手書きだとスムーズにいくのは、私たちの意識、アイデアや思想はアナログ出力だからです。手書きメモの便利さはアナログで書きながら少しずつ記号(デジタル)に変換することができるということです。逆に、人間のアナログ出力をいきなりデジタルで表現しようとすると、変換にコストがかかってしまうと。これがデジタルで思考することの窮屈さの正体なのではないでしょうか。


(次ページ、「アナログとデジタルの触媒としてのコンピュータ」に続く)

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