iPhoneはBluetooth機器の「ハブ」になるか?
iPhone 4S以降のiOSデバイスは、「Bluetooth 4.0+HS」に対応している。従来のBluetooth規格(Bluetooth 2.1+EDR)との互換性があり、ヘッドセットやスピーカーなどオーディオ機器は変わらず利用できるため当初はそれほど意識されなかったが、昨年iPhone5s/5cとともに発表された「iBeacon」、そして今年のWWDCで登場した「HealthKit」「HomeKit」により、その意味が明らかになってきた。
Bluetoothの標準化団体であるBluetooth SIGは、Bluetooth 4.0から導入されている低消費電力通信規格「Bluetooth Low Energy」に対応する機器を総称したブランド名として「Bluetooth Smart」を用意している。WWDCの基調講演ではあまりこの言葉を聞くことはできず、Appleのウェブサイトでも敢えて言及しないかのような扱いだが、いずれの技術/フレームワークもBluetooth Smartを基礎としている。
22日に都内でBluetooth SIGが開いた会見では、今後数年でBluetooth Smart対応機器が急増するとの見方が示された。ヘルス&フィットネス分野では2013年には世界全体で3430万台程度だったものが、2018年には1億4200万台にまで増加するという。スマートホーム分野も同様に、2018年には1億8150万台にまで増える予測だ。HealthKitとHomeKitはその推進力であり、iPhone/iPadに「ハブ」としての役割を担わせることで市場を開拓していく目論見なのだろう。
Android陣営もその市場を目指さないわけがない。先日のGoogle I/Oで発表されたAndroid OSの次期バージョン「L」では、昨年末に仕様が策定されたBluetooth 4.1の標準サポートを明らかにしたうえで、ヘルス&フィットネス分野とスマートホーム分野にコミットする方針を表明している。
Bluetooth 4.1も引き続き「Bluetooth Smart」ではあるが、IPv6対応やデータ転送の高速化に加え、「1対多」接続に対応するという機能強化が図られている。さらに、一度ペアリングを済ませたデバイス同士であれば、接近するだけで(ユーザーの操作なしに)自動再接続することもできる。この「1対多」と「改善された接続性」は、ウェアラブル端末やモノのインターネット(IoT、Internet of Things)を利用するうえで重要な機能であり、スマートフォンに求められる「ハブ」としての機能を実現するうえで必須だ。
本稿執筆時点でAppleは、iPhone/iPadでBluetooth 4.1をサポートするかどうかを明らかにしていない。しかし、Bluetooth 4.1には「ソフトウェアアップデートが可能」というもうひとつの特徴がある。WWDCでは発表されなかったが、「1対多」接続の意味を考えるといずれアップデートされる可能性は高い。この秋公開される「iOS 8」に含まれることも大いに考えられる。
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