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業界人の《ことば》から 第106回

こんなとこにもクラウドが活躍

米余りの時代に米不足、「獺祭」人気の裏にある旭酒造の懸念

2014年08月26日 09時00分更新

文● 大河原克行

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食と農業のためのクラウドサービス

 そこで旭酒造が取り組んだのが、ITを活用した科学的手法による生産安定化への取り組みだ。富士通が取り組んでいる食・農クラウド「Akisai(秋彩)」を導入することで、山田錦の生産ノウハウを蓄積。これを広く公開することで、山田錦の生産農家を広げようというわけだ。

栽培作業実績を収集し、蓄積していく

 その第1歩として、旭酒造と富士通は、2014年4月から、山口県内の2件の山田錦生産農家に「Akisai」を導入。農業生産管理SaaSおよびマルチセンシングネットワークを導入して、栽培作業実績情報の収集、蓄積を行っている。

 PCやタブレット、スマートフォンを活用し、農家の日々の作業実績や、使用した農薬や肥料、資材などのデータを入力。さらに、草丈、茎数などの稲の生育状況、収穫時の収穫量や品質などのデータも入力する。

 また、圃場に各種センサーを設置して、気温や湿度、土壌温度、土壌水分、電気伝導度を1時間ごとに自動収集。定点カメラにより、正午の生育状況を撮影する。

 これらの情報はクラウドで管理。それをもとにして、栽培の手引きとなる「栽培暦」を作成。2015年以降、栽培暦を広く公開することで、山田錦の生産者増加につなげる考えだ。

 「蓄積された栽培情報をもとに、農業関係者の協力を得て、山田錦の安定栽培技術の確立を行い、山田錦の生産を新たに開始する生産者に栽培ノウハウを提供することで、生産量増加につなげていきたい」という。

獺祭に使用される「山田錦」

オリジナルの「山田錦」

 もともと旭酒造は、データを活用した科学的分析により、冬場の仕事であった杜氏作業を、1年中行えるようにしたという実績がある。今回も同様に科学的手法からアプローチしようというわけだ。

 安倍政権になって、酒米は減反政策から外れることになった。「山田錦の安定調達の鍵は、生産技術の問題だけ」と桜井社長は指摘する。

 富士通のAkisaiは、2012年度からサービスを提供し、これまでに、紅茶や野菜、果物、米、らんなど、100農場を超える農業生産法人で活用。最近では、JA、JR九州、イオンでも導入している。

 「生産量を高め、無駄を無くすといった点で成果があがっている」と富士通・廣野充俊執行役員は語る。

 富士通でも、Akisaiの技術を使い、沼津工場や会津若松工場の空いたスペースを利用。実際に、野菜の生産を行うといつた実績も出ている。

 「獺祭」の安定供給のために、富士通のAkisaiはどこまで貢献できるのか。

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