「えれさぽ」で結実するエレコム流のカスタマーサポート
―― サポート業務で蓄積されていくナレッジデータベースは、商品開発部門へのレスポンス以外にも活用されるのでしょうか?
田中 「我々のサポートチームが蓄積していくサポート情報を、えれさぽとして公開しています。先ほど触れたように“電話を減らそう”がサポート部門のテーマですので、対応したサポート情報をマニュアルのように開示したらどうだろう、という意見が出たので、実行してみました」
河原林 「2年前にサポート対応マニュアルをFAQ形式で公開しました。すると、公開初年に300万アクセスを獲得したので、専任スタッフを置き、えれさぽとして独自コンテンツに改めました。3年目の今年は1000万アクセスのペースでご利用いただいています」
―― えれさぽの専任スタッフもこのサポートセンターにいる方ですか?
田中 「そうです。当初、専任スタッフは1名だったのですが、今では3名が日々、えれさぽの更新にあたっています。現場でどんどん更新していくのでスピード感があります。午前中のサポートが共有されて、夕方にえれさぽのコンテンツになっている、というようなこともありますね(笑)」
河原林 「現在、電話によるサポートが年間約34万件ある一方、えれさぽの総ページビューは約1000万です。この数字からも、えれさぽがどれだけ頼られているかがわかるかと思います。また、えれさぽを参照する方は、必ずしも弊社製品を購入後というわけではなく、購入前の情報収集として参照するケースもあると見ています。そういう意味ではマーケティングに貢献しているともいえると思います」
田中 「場合によっては、周辺機器に馴染みのないケータイショップのスタッフさんも、ユーザ様にこのサイトをご案内いただければ設定方法がわかるので重宝していただいています」
―― えれさぽがほとんど製品マニュアルの役目を果たしているようでもありますね。
田中 「もちろん、商品開発チームが作成する製品付属のマニュアルもあります。ただ、開発チームの目線だとやっぱりお客様目線が足りないこともありますので、付属マニュアルをサポートチームで確認してから製品に添付するようなこともたびたび出てきました。えれさぽがお客様から支持されることで、会社としてユーザ様に必要な情報は何か?という答えに一歩一歩近づいているような気がします」
―― 電話サポートというと、やはり対応に苦慮する電話もあったりすると思うのですが……。
田中 「そういうことは多々ありますが、それでも“お客様は正しい”を念頭に真摯に対応するように心掛けています。お客様に指摘されて気づくようなマニュアルのミスがあったり、電話口で対応することで新たなサポートの手順が生まれることもあります。お客様と一体感を持ちながら対応することがやはり重要ですね」
―― 責任が大きいだけでなく、集中力も必要な業務なんですね……。
河原林 「一般的にサポート業務に就いた人は、1~2年でその職から離れたいと思うことが多いようです。弊社の場合は、サポートの窓口が製品のジャンルやブランドによって20ほどあるので、“マンネリ化”や“飽きる”ことなく、どんどん窓口スキルを身につけてステップアップしていただいています」
田中 「なかにはいろいろな窓口を担当したがる積極的な人もいますけどね(笑)」
河原林 「ともかく、精神的・肉体的に負担が大きい業務であることは理解していますから、メンバーを支える環境にも気を遣っています。現在の新オフィスでは、快適な業務空間を作ることに努力していますし、休憩スペースも充実しています」
田中 「昼休みなどは、各班のメンバー間で調整して休憩することになっていますが、のんびりリラックスできるよう、休憩ルームを設けています。マッサージチェア、ウォーターマッサージベッドで身体を休めることもできます。また、ノドをいたわる飴や、カップラーメンのような軽食もストックしてあり、メンバーは無料で利用できます。ドリンクベンダーも無料ですよ」
エレコムのサポートの真髄は
メンバー意識の高さ、メンバーを支える環境にあった
最近のPCやスマホの周辺機器は多機能化が進み、基本ワイヤレス接続だったりするため、長くPC業界に関わっている筆者でも手こずるケースが少なくない。サポートセンターに電話するような事態に陥ることはあまりないものの、インタビュー中にも登場した公式サイト「えれさぽ」の充実ぶりを非常にありがたく感じていた。
今回の取材で「えれさぽ」の情報が、サポートメンバーによるサポート情報から構築されていることを知り、合点がいった。電話で問い合わせたユーザーの生の声から、困っていること、それに対する解決策が拾い上げられているのなら、その内容がわかりやすく的確であるのは当然のことだろう。
ユーザーの生の声に対応しながら、それをわかりやすいナレッジデータベースとして構築する、それがエレコムのサポートセンターの真髄なのだ。札幌という地域性にもマッチして上手く稼働している。もちろんそのサポート品質は今後もどんどん向上していくことだろう。それを確信しつつ、札幌を去る取材班なのだった。