ダイナミック型ドライバーにこだわったDynamic Motion「DM008P」
力感と繊細さを兼ね備えた新進ブランドのイヤフォンを聴く (4/5)
2014年09月01日 13時00分更新
帯域はよくばらず、しかし滑らかな質感を感じさせるサウンド
サエクコマースの製品紹介によると、DM008Pはダイナミック型ドライバーならではの力強い再現性に加えて、「ハイレゾ音源にも対応する、高い情報量と解像度」と「聴き疲れない快適な音質」を両立したことがポイントになるという。
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THE BEST “Blue |
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THE BEST “Red |
まずはiPhone 5との組み合わせで試聴。ここではハイレゾ版もリリースされているKalafinaの「The BEST Blue」と「The BEST Red」をソースに選んだ。まず最初に感じるのはズンと前に出ながらビートを刻むリズム帯の存在感。その上に紗がかかったような滑らかな女声ボーカルがふんわりと乗る。カナル型の密閉式だがこもり感などもなく自然に空間を表現する。
V字バランスなどと呼ぶそうだが、韓国のユーザーは重厚なベースと高域の伸びを重視したいわゆる“ドンシャリサウンド”を好む傾向があるそうだ。逆に日本のユーザーは“フラットな音質”をよしとする傾向が強く、各帯域のバランスが整った優等生的な再生好む傾向があるのだという。
DM008やDM008Pにもその片鱗はあるが、日本人の好みに合ったフィードバックをサエクコマースでは出している。DM008Pのサウンドは、低域に量感や歯切れよさがあるエネルギッシュな傾向であるのだが、高域方向のレンジはそれほど欲張ってはいない。中域はふくよかでボーカルをしっとりと聴かせるという点も重視しているのではないかというのが、聴いてみた感想だ。
従来機種のDM008と聴き比べると、DM008Pではより厳密にチューニングされたサウンドになっているとわかる。低域のエネルギー感自体は近い傾向だが、DM008では高域に少し強調感があり、ボーカルやそれよりも上の中高音域にわずかなざわつき(付帯音)を感じる。DM008Pではそのあたりが整っているため、より落ち着いたテイストになる印象だ。DM008はもう少しメリハリ感の利いた元気な傾向で、ポップスやロックなら楽しく聴けそうだ。好みに応じて使い分けるのも面白いだろう。
再現性という意味でも十分な実力を持つ。
プレーヤーを変えるとそれにあった素直な反応が返ってくる点に好感が持てた。いくつかのプレーヤーで聴いてみたが、「COLORFLY C4」のようなゆとりあるアンプを搭載した機種で聴くと、硬質でしっかりとした輪郭のある描写が際立ち、透き通るように澄んだS/N感の高さなども感じるようになった。
特に力感の高さはダイナミック型ならではの醍醐味。繊細というよりは筆圧の高いペンで書いたようなしっかりとした線で音が描かれるが、分解能は十分に高く、音にスピード感が出る。こうしたプレーヤーの差を描き分けられる実力がある点はいい。
SHUREのSE215など定番のダイナミック型イヤフォンと比べると音の輪郭はもう少し緩む。密閉感も低めだ。そのぶん聞き疲れもしにくい。一連の組み合わせの中でベストマッチと感じたのは、古いプレーヤーだがケンウッドの「HD20GA7」との組み合わせだ。SE215との組み合わせで聴くと低域が少し前に出すぎてしまうが、DM008Pとの組み合わせでは低域から高域までよくなじむ。
HD20GA7はソースを単純な音ではなく音楽として聴かせることがうまく、空間表現にも優れるプレーヤーだが、DM008Pとの組み合わせで聴くボーカル曲とは特に相性がよさそうだ。レンジは決して欲張らないが、ボーカルは絹のように滑らか。低域のアタック感は強すぎず、高域にもとがりはない。派手さはなく中庸なサウンドだが、空間は深く、音の世界に浸れるし、疲れず長時間聴き続けたくなる。ダイナミック型ドライバーならではの力感に加え、繊細で滑らかな中域、キラキラと透明感のある高域といったDM008Pの繊細さ・表現力の高さといった別の魅力も認識できた。
機器を組み合わせ、新たな音の世界を築く楽しさをDM008Pが思い出させてくれた。

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