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最新ハイエンドオーディオ、本当のところ 第8回

ダイナミック型ドライバーにこだわったDynamic Motion「DM008P」

力感と繊細さを兼ね備えた新進ブランドのイヤフォンを聴く (3/5)

2014年09月01日 13時00分更新

文● 編集部

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ユニットメーカーだからできた、力強く繊細なドライバー

 内部にも目を向けてみよう。

 DM008Pが内蔵するユニットは「Power Dynamic Driver」と名付けられた独自開発のダイナミック型ドライバーとなっている。高級イヤフォンのドライバーというと、まず最初にバランスド・アーマチュア(BA)型ドライバーを想像する人も多いと思うが、Dynamic Motionはあくまでもダイナミック型ドライバーにこだわっている点に注目したい。

Power Dynamic Driverの分解図

 実は筆者もダイナミック型ドライバーが好きなひとり。エネルギッシュな低域、彫琢整い骨太な音の輪郭、そしてシンプルなユニット構造で大きな振動板から音がストレートに飛んでくる点などに魅力がある。

 ダイナミック型ドライバーは振動板に直接ボイスコイルがつながっているのが特徴。ボイスコイルに電気を流すとその周りに磁界が生じる。これが近くに置かれた永久磁石の磁界と反発したり、引き寄せられたりする。この力で直接振動板を動かし、音(空気の振動)に変えるのが基本的な仕組みだ。

 使用する磁石の強さや配置などによって動き方が変化し、音質の善し悪しを左右する。イヤフォン用のダイナミック型ドライバーでは、円形の磁石を囲うようにボイスコイルが配置されているケースが多いが、Power Dynamic Driverでは穴の開いた大き目の磁石を使用し、その内側にボイスコイルを置く仕組みとなっている。

円形の永久磁石の内側にボイスコイルが置かれている。これにより磁石を大型化できる。

 結果として8mmとカナルイヤフォン用のダイナミック型ドライバーとしては小口径の振動板ながら、10mmを超えるクラスの振動板を駆動させるのと同じぐらい大きな磁石を使えるようになった。本体そのものの小型化はもちろんだが、軽い振動板をより力強く駆動することで、低域のキレのよさや周波数帯域のワイドレンジ化、音の広がり感なども改善できるという。

 またDM008とDM008Pでは使用する振動板も一般的なPET(合成樹脂)ではなく独自素材になっている。詳しくは公開されていないが、より高性能なフィルムとのことで、付帯音(余計な響き)の低減などに効果があるのではないかと想像される。

 一般的にダイナミック型ドライバーは低域の力強さや音のメリハリ感に優れる一方で、BA型ドライバーと比べて表現力の繊細さや情報量の豊富さは譲るとされるが、上記のような仕組みであればダイナミック型の特徴を生かしつつ、微細な信号の変化にも敏感に対応でき、繊細で情報量が豊富な表現力も兼ね備えたドライバーとなるはず。このあたりを念頭に入れながら、試聴を進めたい。

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