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「Google Appsのリセラーはこの1年で相当減っていると思います」。先日、Google AppsパートナーのあるSIerから聞いた話だ。薄利多売にならざるを得ないクラウドインテグレーションの影の部分は、クラウドの普及と共に顕在化しつつある。
安すぎるGoogle Appsにパートナービジネスは載らない?
グーグルの企業向けクラウドであるGoogle Apps for Businessは、2012年の無償版の新規提供終了以降も導入を伸ばし続けている。デスクトップと同じような使い勝手を実現したGmailを中心に、チームでの共同作業を容易にするカレンダーやドライブ、メッセージや音声、ビデオ会議まで実現するハングアウトなど、幅広いアプリケーションを月額制で安価に利用できるのが特徴だ。モバイルデバイスの普及と共に、その利用価値はますます高くなっており、導入企業はすでに500万を超えている。
その一方でGoogle Appsのリセラーパートナーはどんどん減っているという。正確に言うと、200社以上というパートナーの数は減っていないにも関わらず、活動している会社は少なくなっているのが現状。しかも大手3キャリアや有力SIerが販売しているにもかかわらず、事実上はソフトバンク一強だという。
この理由は簡単で、Google Appsが安すぎるからだ。
そもそも1ユーザーで500円/月(年間プラン)というGoogle Appsの料金を基準に考えると、保守・サポートや機能を拡張するアドインで長期的にお金をとるモデルでも、なかなか高い金額は請求できない。つまり、パートナーとしては300円/月のアドインを払ってくれるユーザーを大量に集めないと、ビジネスとして成り立たないことになる。
実際、3月のITACHIBA会議で講演したGoogle Appsの有力パートナーであるグルージェント 取締役 相談役 栗原傑亨氏は、「結局、よそ様が作るモノを売っても粗利が薄い。導入支援などの付加価値を付けても、オンプレミスで零細のSI。多能工のエンジニアが必要で、同じことを何度も繰り返すようなビジネスだった」と語っている。
使いやすい、導入しやすい、コストも減らせる!の割を食う
もちろん、グーグル側もこの懸念を認識している。Google Apps for Businessのよくある質問には、「収益を得られますか。Google Appsが顧客にとってこれほど低価格であるということは、我々の受け取るマージンは少ないのではありませんか。」という質問が載っている。これに対して、グーグルはコンサルティングやサービス管理、サポート、データ移行など、さまざまな収益手段があると説明している。なにより、Google Appsが手頃な価格だからこそ、顧客はより多くの予算をパートナーのサービスに計上できると回答している。
しかし、導入が容易なSaaSの場合、パートナーは付加価値を提供しにくい。設定やアドバイスを提供するパートナーは多いが、ユーザー自体が使い勝手に慣れてしまえば、サービスは不要になる。グーグルとしては、使いやすいものを作ってしまったがため、パートナーが介在する余地がなくなったともいえる。そして、クラウド導入で浮いた予算は新規投資に向かわず、そのままコスト削減という果実として会社の経営者に供されてしまった。グーグル側としては、ここが大きな誤算だったのではないだろうか?
結局、現在パートナーとして残っているところは、モバイルデバイスや自社クラウドサービスを組み合わせられるソフトバンクのような大手ベンダー、あるいは中小企業のIT導入のきっかけやアカウント開拓として割り切っているSIerのいずれか。多くのパートナーは、単なるアカウント販売から自社が得意な分野に進めず、既存のビジネスを守るか、クラウドとの関係を再検討しているに違いない。
特に地方のパートナー不足は深刻だ。Googleでエンタープライズ パートナーを検索すれば分かるとおり、パートナーは都内に集中しており、地方できちんと取り扱えるパートナーはごく一部。実際、冒頭に話を聞いたGoogle AppsパートナーのSIerは都内を商圏にしているが、この1年地方からの問い合わせが急激に増え、ビジネスのやり方に悩んでいるという。都内のSIerにとっては、1日かけての地方に出向き、導入やサポートするなどビジネス的にまったくうまみがない。販路は拡げたいが、手離れが悪いと対応できないというジレンマを抱えることになるわけだ。
さて、こうした現状をパートナービジネスと相性の悪いGoogle Apps特有のものと捉えるか、異なるレイヤーのクラウドサービスにも起こりえる話と捉えるかは、意見が分かれそう。しかし、はっきりしているのは、クラウドで得られるコストメリットの裏には、必ず割を食う役回りが存在するということ。深夜の1人労働が問題となったローコスト外食チェーンの話と共通した匂いを感じるのは私だけであろうか?
筆者紹介:大谷イビサ

ASCII.jpのTECH・ビジネス担当。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、日々新しい技術や製品の情報を追う。読んで楽しい記事、それなりの広告収入、クライアント満足度の3つを満たすIT媒体の在り方について、頭を悩ませている。

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