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情シスの本音がベンダーを突き刺すパネルディスカッション

ベンダー涙目?個性派情シス担当が語るIT活用の実態と問題点

2014年08月13日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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Access使い、パンチャー、業務の女性

 パネルでは社内で必要な人材論に話が飛ぶ。サンコーインダストリーと同様、旭フーズでも、請求書の出し方など顧客からのリクエストに応えることが多いという。これをアドインで開発すると、けっこう金額が取られるが、「社内で4~5人くらい“Access使い”が現われ、それなりに成果を残してしまう。こうなると、Access使いこそが仕事のてっぺんだと誤解される」(菊地氏)という弊害を産むという。これに対して、同社では社員として雇用した“優秀なオタク”が開発したプログラムによって課題を解決できたという。

 一方、決裁権を持つ社長でありながら、情報システム部のトップ、かつPHPやMySQLのプログラマーでもある奥山氏は、情報システム部門が育ってないという課題を挙げる。「うちは情シスに関しては、全部社長がやって、フローチャートを作ると思われている。IT部門はわれわれは単なるパンチャー(コードを書く人)だから、出る幕がないと考えている」(奥山氏)。

 面白かったのは、業務システムは女性の意見を聞かないと導入が進まないという点。菊地氏は、「女性は細かいし、正確だし、男性が許すところを絶対に許さない。情シスは営業を割ける傾向にある。だから、ベンダーの営業マンは情シスより、業務の女性を口説くべき(笑)」と指摘し、奥山氏も「女性は“文句言い”だが、その文句の中にヒントが必ず隠されている」も同調した。さらに女性と男性ではなく、内勤と外勤という分け方もあり、「半径3m範囲で動いている内勤の意見を業務システムに活かすべき」(奥山氏)と指摘した。

クラウドはもっと圧倒的に安くなるべき

 パネルディスカッションのまとめでは、クラウドやIT、日本の将来像まで幅広い意見が噴出した。

 興味深いのは、今のクラウドは決して安くないという議論だ。システム全体をクラウド化した西原環境の稲嶺氏は、「人数分考えたら、サイボウズの月額780円は決して安いとは思わない。クラウドは、もっと圧倒的に安く、ケータイのように簡単に移れるべき。将来的にはいろんなものを共有していかないと行けないので、保険屋のコーディネーターのような存在が必要になってくると思っている」と語る。ハウジング屋が利益をキープしながら、クラウドをやっているから中途半端なプライシングになっているというのが、稲嶺氏の論だ。

 稲嶺氏の話を受けた奥山氏は、「とにかく安くというのをコンピューターに求めるのはやめようという時代が来るとみんな言っているけど、この会でもやっぱり安くという話が出てくる。だから私は価格の議論をやめて、別の世界に行きたい。たとえば、ビッグデータの需要予測。将来を予測するのは巨大な計算機であるコンピューターしかできない」と語る。今後の業界の変化も、「あるとき突然現れるのではなく、小さなことを少しずつ改善し、それがノウハウになって変わっていく」と予想する。

 地方に行く機会の多い菊地氏は、「商品はいっぱい生産されているが、実際は消費されていない」という人口減少の減少を目の当たりにして、可能な限り共有のメリットを活かすべきと主張。「人類補完計画ではないけど、狭い日本の中で無駄を産まないように、それぞれがある程度の妥協を寛容の心で進めていってもよいのではと思う。お互いがいい知恵を持ち合うべき」(菊地氏)とまとめた。

 その後、ITACHIBA会議では、ベンダー側とユーザー側の意見を踏まえ、参加者同士がワールドカフェ方式でディスカッションを行なった。前半の意見を踏まえ、情シス論やITビジネスの課題などを突っ込んだ各テーブルで行なわれ、有意義な討論が実現したようだ。

ワールドカフェスタイルでのディスカッション

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