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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第48回

Google「Cardboard」に学ぶ、ストーリーのつくり方

2014年08月22日 09時00分更新

文● 前田知洋

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ベルサイユ宮殿などにひとっ飛び

 筆者はiPhoneユーザーなので、友人のAndroidスマートフォンを借りました。友人は「Google I/O」の参加者だったので専用の「Cardboard」アプリはもうインストール済み。アプリでは、Earth / Tour Guide / YouTube / Exhibit / Photo Sphere / Street Vue / Windy Dayの7つのシーンを楽しめます。筆者の一番のお気に入りは、Tour Guide。ベルサイユ宮殿内を案内をしてくれます。「Google Cardboard」を目に当てたまま、頭を前後左右、上下に動かすと、自分がベルサイユ宮殿の一部屋にいるような錯覚を覚えます。本体は段ボール、レンズはプラスチックであるにもかかわらず、本格的なVRヘッドセットのワクワク体験ができます。

「Google Cardboard」のストーリー「他人がコピペできない体験」

 プロダクトとしての「Google Cardboard」が優れているのは「他人がコピペできない体験」ができること。つまり、ゴールは簡易VRヘッドセットの完成ですが、そこに到達するまでのストーリーが、以下のように、とても計算されていること。

  • 本体、レンズ、NFCタグ、マグネットスイッチなどのフルセットは、「Google I/O」参加者が入手できる
  • 作るのに、ちょっと苦労する
  • 7つのシーンをうち、好きなシーンを選択できる
  • とりあえず、楽しい
  • 不完全なプロダクツであるがゆえ、無限の可能性を想像する

輪ゴムやマグネットなどの素材感が夏休みの工作っぽい。それも魅力のひとつ

 たとえるなら、夏休みの工作のような楽しさとでもいうのでしょうか。50cm×20cmほどのサイズの切り抜かれた段ボールでVRヘッドセットが完成し、先端技術が体験できる(Androidスマートフォンを持っていればですが…)。さらに、友人や家族と「ね!面白いでしょ!?」と「楽しさ」を気軽に共有もできるのも優れています。

 FacebookがVRヘッドセットとして有名なOculus Riftの開発元Oculus VR社を約2,000億円で買収したのは、皆さまのご存知通りです。邪推するならば、もし今回のGoogleによるVRヘッドセットの無料配布がFacebookへの牽制であるとしたら、企業の戦いのストーリーとしても、さらに興味深いフェーズに差し掛かったことになります。目が離せないのは、VRヘッドセットだけではありません。(謝辞:「Google Cardboard」を提供していただいた、(株)CRI・ミドルウェアの幅 朝徳さんにお礼申し上げます)

前田知洋(まえだ ともひろ)

 東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。

 著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。現在、ビジスパからメルマガ「なかマジ - Nakamagi 2.0 -」、「Magical Marketing - ソシアルスキル養成講座 -」を配信中。

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