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モナカもジェラートも80kcal! 開発の裏にはどんな秘密が……

グリコの80キロカロリーアイスの開発秘話を聞いてきた

2014年08月20日 09時00分更新

文● コジマ/ASCII.jp編集部

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試行錯誤もあればうれしい出会いもあった

――僕らは市場に出回っている成功品しか見ていないわけですけれども、その裏には失敗もたくさんあったわけですよね。

田中 チョコモナカは最初、カロリーを控えるために、チョコを入れるのではなくて、チョコソースを使おうとしていたんです。ソースをバーっとかけると、それっぽくなるんですよ。守りに入っているなあとは思っていたんですが、つい逃げてしまった(笑)。

 ところが、上司に「お前、それでいいのか」と言われまして。「それをチョコモナカと言って世に出せるのか?」と。それではっと目が覚めて、チョコ作りに精を出し始めた記憶がありますねえ……。

 あと、記憶に残っているのは「抹茶」かな。苦労したんですよ、なかなかおいしくならなくて。開発にあたってリサーチしてみたら、ハーゲンダッツさんの「グリーンティー」、あれをおいしい抹茶アイスとしてあげる人が多いということに気付いた。ところが、あれは「抹茶ミルク」のような味なんですよね。

――なるほど、純粋に抹茶だけの味ではないですものね。

成功談だけでなく、失敗話も気さくに話してくれたのが印象的だった

田中 抹茶の味はともかく、カロリーコントロールアイスにとっては、ミルクの味を出すのはすごく難しい。その代わりというわけでもありませんが、いろんな茶葉を試したんです。高級なものから、渋みの強いものまで。

 試行錯誤して行き着いたところが、愛知県の西尾の抹茶だったんですね。それを使って「これはおいしいアイスができた!」と思ったら、意外と売れなかった(笑)。

 「じゃあ、組み合わせや」と思って、その次には黒蜜を入れようと。黒蜜って要は黒糖なので、当然、そのまま入れるわけにはいかない。そこで「黒蜜風のソース」を作ったんですけど、これもあまりうまくはいかなかった。

 なら、「やっぱりミルクやな」と、ミルクソースを作ろうとなった。真正面からハーゲンダッツさんとぶつかってみようかな、と考えたわけです。ところがこれもなかなか売れず……。抹茶は苦しんだ割には報われなかったかもしれませんねえ。

――いろいろな試行錯誤があったと……。開発にあたって、様々なリサーチをされていると思うのですが、「おっ」と思った声などあれば、聞かせてください。

田中 調査の中で、「なんでカロリーが高いものを、無理やり下げているんですか?」という声がインタビューで出てきたんですよ。「カロリーの低そうなものが80kcalなら嘘っぽくないのに」と言われて……これは“はっ”としましたね。えっ、そういう考えもあるんだなあと。

アイスもモナカも80kcal。確かに「嘘!?」と思ってしまう人も多いだろう

 自分の頭の中で、「絶対80kcalにならなそうなものを、80にするんだ!」と思って10年ぐらいやっていたんですけど、「無理してる」って言われたというのは盲点でしたね。まあ、「確かに無理してるわな」って思いますけど(笑)。

 でも、驚いてもらえるっていうんですかね……「えっ!? これで80kcalなの!」という反応が僕は嬉しいですね。それだけのパンチのあるものが作りたいと思ってずっとやってましたから。

――80kcalでアイスが食べられるんだ、ということを喜んでいる人もたくさんいらっしゃるわけですからね。

田中 いい話としては、家族にカロリー制限をしなければならないお子さんがいる、という方がいて。その方が、お客様センターに、「ありがたいです」という電話をかけていただいた。これがとても嬉しくて、いっぺん会おうと思って、実際に行ったんです。

 そうしたらお母さんに、「この子は他の子が食べられるものが食べられないんです」と言われて、「できるだけ長く売って欲しい」とお願いされた。食べられないものを食べられる喜びがある、ということなんですね。

 そのお子さんは4歳か5歳ぐらいだったんですが、自分にもそれぐらいの子供がいて……うちの子が普通にアイス食べてるのに、この子はそんなに大変なんだなあ、と感じて。そのときは、この商品を作っていてよかったなあと思いましたね。「がんばって長く売ります」といいましたよ。

 その子に、「何味のアイスが食べたい?」って聞いたら、「イチゴのアイスが食べたい」と言われたので、「おじさんが作るね」と言って、ちゃんと世に出しました。もう10年ぐらい前の話ですけどもね。


(次ページでは、愛されるアイスを作るために何年もかけて登ってきた)

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