営業マンによる地上戦にこだわるKDDIまとめてオフィス
3社目のKDDIまとめてオフィスは、クラウドにこだわらず、デバイスやインフラ、事務機器、什器に至るまで幅広く展開しているのが特徴。登壇したKDDIまとめてオフィスの菅雅道氏は、過去にDDIやパワードコムなどさまざまな合併を経験し、社内ベンチャーとしてKDDIまとめてオフィスを立ち上げた経緯を説明した。
KDDIまとめてオフィスのサービスでは事務所の開設時に必要な固定電話やインターネット、FAX、オフィス家具、複合機などをワンパッケージで用意できるのが売り。auのケータイやスマホで0AB-J番号を発着信させたり、光ファイバーではなくWiMAX2で100Mbpsインターネット接続したり、KDDIらしいサービスで事務所開設をスピーディに行なえる。「最高にベタなクラウドサービスとしては、ペーパーレスFAXがある。FAXのハードウェアをクラウド化し、ペーパーレスで送受信してしまおうというもの」(菅氏)。
その他、「うちの会社の変なところは、オフィスの中古家具を取り寄せたり、便利屋さんのネットワークを持っていたり、冷蔵庫や小型白物家電を用意できるところ」(菅氏)とのことで、とことんユーザーニーズにこだわっている。オンラインに軸足を置いた富士通やサイボウズと異なり、とにかく数多くの営業マンによる“地上戦”にこだわっているのが、同社の特徴といえる。
中小企業にITを売るということ
3社ともサービス概要や課題は大きく異なるが、中小企業向けITサービスという点は共通している。ここを伸ばすのに重要なのは、やはりパートナーだ。
FJMの浅香氏は、「継承していたJ-SaaSのサイトを閉じたと同時に、アクセス数が一気に下がった。それだけ認知されていないこと。しかも営業が足を運んでいた既存のSIビジネスと違って、お客様も見えない。まずはサポーターに認知してもらうこと」と語る。まだまだハードルは高いと言うことだ。
サイボウズの野水氏は、「パッケージもクラウドも最初はパートナー経由ではまったく売れなかったので、ほぼ直販だった。今は全サービス中、パートナー経由が2割くらいになった。サイボウズ自体には営業マンが30人しかいないので、間の人がいないとこれ以上は伸びない」と語る。とはいえ、クラウドを売るに当たっては問題も山積。「月1000円以下のクラウドを売って、そもそも営業の点数になるのかという課題。あとパッケージ版であったインストールや構築料という収益源が失われているが、本来お金をとれる上流コンサルでお金がとれていない」と指摘する。
一方、KDDIまとめてオフィスは、むしろ自身が販売代理店に近い位置づけで、やや毛色が違う。KDDIまとめてオフィスの菅氏は、「われわれがお客様のところに行って感じるのは、クラウドのようなコミュニケーションモノは経営者の方が判断しないと、導入につながらない」と語る。当然、いきなり経営層に営業をかけるのは難しいが、KDDIの場合、電話やケータイなどで別の取引があることが多く、そちらからつないでもらうという。
では想定する顧客となる中小企業に対して、ベンダー側はどんな意見を持っているのか? 「パッケージと違って、無料で試したり、スモールスタートできるのが売り。どんどんチャレンジしていただきたい」(FJM 浅香氏)、「仕事は変えないけど、ツールだけ換えて、かつ儲けたいという方が多い。こうなるとシステムはコストになる。儲けるつもりで、システムに対して、どん欲に取り組んで欲しい」(サイボウズ 野水氏)、「クラウドを入れると、コミュニケーションが変わる。余計なステップや判断がなくなる」(KDDIまとめてオフィス 菅氏)とクラウドひいてはITのインパクトについて語った。
松島氏は、「ユーザー側が儲けるために、自社を変えたいという要望があれば、ベンダー側のオファーがフィットするのではないか? パートナーさんも従来型の売り方やアプローチではなく、イノベーションタイプの取り組みを進めると、導入も前に進むというのが3社共通の意見」とまとめた。これに対して、ユーザー企業はどういった思いを持っているのか? 後半のユーザー側のパネルディスカッションに続く。