DSDやバランス駆動、これでもかの調整機能を盛り込んだ意欲作
驚きのHi-Fi感をぐっと凝縮した、パイオニア U-05を聴く (5/6)
2014年08月03日 12時00分更新
とにかく音がいい、調整すればシビアに反応する
以上、導入のハードルが多少あるため、U-05はある程度パソコンを使ったハイレゾ再生に対する知識を持った人向けという印象もある。
しかし、音を出すとそんな苦労は吹き飛ぶ。とにかく音がいいからだ。
まず最初に感じるのは、再生音がワイドレンジできわめて情報量が多いこと。一皮向けたような透明感に耳を奪われる。音場も広く立体的で、まさにHi-Fiと言えるサウンドだ。SC-LX87も大変音のいいAVアンプだったが、それに通じるような雰囲気も残しつつ、一方で人の声の生々しさ、無音からピンと立ち上がるようなギターの弦や打楽器の鮮烈さなど、オーディオ専用機ならではの高い完成度の音作りが凝縮された製品という印象だ。
これは手持ちのヘッドフォン(ゼンハイザーの「HD700」)を接続し、特に設定は変えず工場出荷時の状態で聴いた際の感想。さらに細かな調整を加えていくと、設定に合わせてシステムが鋭敏に反応し、音が少しずつだが劇的に変化していくのを感じる。
まずはデジタルフィルターの設定を「SHARP」「SLOW」「SHORT」と順番に変えてみる。SHARPは3つの中ではもっとも先鋭的なサウンドで、きめ細かく音の輪郭が整った、情報量の多さを感じる。SLOWは逆にゆったりとした雰囲気で人の声などを滑らかに聴きたいという場合によい。パイオニア独自のSHORTは高解像度系ではあるが、SHARPほどはきつくならず、バランスの取れた再現だ。ヘッドフォンやソースに合わせて好みに選択したい。
デジタルフィルターはDSDでも3段階の変更ができるが、その効果はPCMと異なる。MODE1~MODE3に変えるとだんだんと高域がとがった感じになっていく印象だ。マニュアルを読むと、可聴域外の高域の減衰量が変わると書かれているが、耳で聞こえないような超高域だけでなく、全体的な出音にも十分影響があるように感じる。
次にDIRECTモードとオーディオスケーラーを利用した場合の差を確かめる。サンプリング周波数は基本的に、UpSampling LOWのモードで192kHzまたは176.4KHz、HIGHのモードで352.8または384kHzに変換される(32kHzの音源と352.8kHz/384kHzの音源は変換なし)。LOWまたはHIGHに変えることで時間軸方向の情報量が増えることになる。
Hi-bit 32はビット拡張で、CDの16bitやハイレゾ音源の24bitを32bitのデータに変換する。ダイナミックレンジの深さや音の滑らかさに影響が出る設定である。
実際にDIRECTとオーディオスケーラーの切り替えながら何曲か聴いてみると、オーディオスケーラーをオンにするとよりメリハリの利いた元気のいいサウンドになっていく印象がある。PCMとDSDでは傾向が異なるが、DIRECTに比べると音に多少の演出が加わったような雰囲気がある。DIRECTは素材の質が素直に出る印象だが、音源そのものが持っているニュアンスははっきりと感じ取れる。
特にDSD音源ではオーディオスケーラーをオフにすることで、強弱は控えめでおとなしくなるが、よりナチュラルに音源そのものの質の良さが出てくるようだ。ちなみにUpSamplingとHi-bit 32は個別にオンオフが選べるが、Hi-bit 32の設定だけをオンにした場合、DSDの音源ではほとんど差を感じなかった。
最後に本機の売りであるロックレンジアジャストについて。これはデジタル信号とクロックを同期する際にどの程度の誤差まで許容するかをユーザー自身が決められる機能だ。一般的な機器では音切れしないことを最優先に安全なところで設定を決め打ちしているが、許容幅を減らせば減らすほど音は正確でキレのあるものになる。だから機器や音源に応じて、もっとも低い許容幅でかつ音切れしない(ロックが外れない)設定を選んでもらおうという考え方だ。標準で調整できるのは、開発側でほぼロックが外れないだろうと想定した4段階。さらにリモコンのボタンを長押しすると、よりシビアな7段階から設定できるようになる。
ロックレンジアジャストはデフォルトで許容量が最大に設定されているが、その値を減らしていくと、明らかに音像がシャープとなり、解像感が高まる。音の質感がより明確となり、空間の奥行きが明快になる。手持ちのノートPCと組み合わせで24bit/96kHzのハイレゾ音源を再生。最初の4段階ではまったく音切れなし。最大の7段階まで減らすと数秒に1度程度、音が途切れるようになるが1段階戻すと気にならなくなる。とにかく効果は絶大で、許す限り最小の許容量にするべきだと感じる。
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