高消費電力に悩まされた
Prescott
2004年に投入されたPrescottは、31段ものパイプラインを持つ長大な新製品となった。最大の特徴は、(こっそり行なっていた)64bit化への対応や仮想化、セキュリティー対応などである。
しかもこれを、仕様がきっちり決まる前に実装するという難しい状況にあった。結果インテルが選んだのは、既存のPentium 4のパイプラインの先頭に、ある種のマイクロコード・デコーダーを追加するという方法だった。
基本的にはフェッチ/デコードそのものは変わっていないのだが、Prescottの世代では内部RISC命令そのものというよりは、内部RISC命令へのポインターが入る形になる。
一方、実行パイプラインは、そのポインターを受けとり、現在の動作モードにあわせて行なうべき命令をマイクロコードから取り出して処理する。
通常マイクロコードを利用すると、その命令だけレイテンシーが数十サイクルにも達することがあるが、Prescottではこのマイクロコードアクセスをパイプライン化したことで、1サイクルの処理能力でアクセスできるようにしたのは見事ではある。
ただし、追加された11段のパイプラインは高速化にはまったく貢献していない。これをカバーすべくLVSなる新しい回路駆動方式を導入(関連記事)したが、その結果は安定動作できないほどの高消費電力につながった。
Pentiumブランドの終焉
結局インテルはPrescottの世代で動作周波数を引き上げることを断念、代わりに2つのコアをMCM(Multi-Chip Module)構造で実装したPentium Dでお茶を濁すことになる。
悪いことに、この頃はAMDが急速にプロセスを改善してきた時期にあたっており、デュアルコアのAthlon 64 X2(後のAthlon X2)はPentium Dと比べて性能も高く、消費電力が低く、おまけに安かった。これもあって、AMDは急速にシェアを伸ばし、当然その分インテルのシェアは減ることになった。
これをカバーすべく、2005年には2次キャッシュを2MBまで増量したPrescott(Prescott-2M)を投入し、翌2006年には65nmプロセスに微細化したCederMillコアのPentium 4と、さらにこれをMC構造としたPreslerコアのPentium Dも投入する。
この2005~2006年は、劣勢な性能や消費電力を価格と仕様の違いでカバーしようということで、細かく仕様を変えたPentium 4が30種類以上も市場投入されており、インテルの人間ですらモデルナンバーを聞いても仕様が思い出せないなんてことが起きていた時期にあたる。
製品を急に魅力あるものにする魔法はないわけで、セールスとしてはとりあえず手持ちの武器で戦わざるを得ないから、こうしたラインナップ拡充は止むを得ないものではあるが、その代償はブランドの毀損である。
そうでなくても劣勢な上、これだけ大々的に大安売りをしたら、もうPentiumというブランドそのものが、そうした製品だと受け止められるのは仕方のないことである。
これに代わる形でマーケットに登場したConroe系の製品がCore 2というブランドをつけたのはある意味当然のことである。結局のところ、Pentium 4/Dの製品販売終了と合わせる形で、Pentiumというブランドも一度終息することになったのは止むを得ないと言えよう。
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