このページの本文へ

世界に向けて出て行くスマホアプリ、必要なのはスピードと理系文系脳の組み合わせ。

2014年07月29日 01時28分更新

文● 松下 康之(Yasuyuki Matsusihta)/アスキークラウド

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 2014年7月28日、スマートフォンゲーム分析運用ツールを展開している5Rocksが、世界に向けて出て行くゲームデベロッパー向けのセミナーを開催した。スマートフォンアプリストア分析のAppAnnie、キャンディクラッシュのKing、ブレイブフロンティアのエイリムなどと共に事例を交えて世界に通用するゲーム配信の方法や最近の傾向などを講演した。

 「世界基準 ~世界・日本でゲームを配信するということ~」というタイトルのセミナーの冒頭に登壇したのは、AppAnnieの日本代表、桑水氏。AppAnnieが把握しているApp StoreやGoogle Playなどのアプリストアのデータを元にiOSとAndroidの両プラットフォームにおける最新の傾向とワールドワイドでの状況を解説。AppAnnieは配信されるアプリにSDKなどを組み込むことをせずにアプリベンダーから各ストアにアクセスするユーザーIDとパスワードを預かって、ダウンロード数や売上などを集計して分析レポートを配信するベンチャーだ。桑水氏の解説によるとAndroid上での売上、ダウンロード数がiPhoneの数値に匹敵するぐらいに成長していること、ただし売上としてはアメリカ、日本など数カ国が牽引していることなどを述べた。
またゲームアプリのアプリ内課金が伸びていること、Androidでは有料アプリよりも圧倒的に無料アプリが多いことなどが紹介された。

 ブレイブフロンティアを展開しているエイリムの高橋氏は、各国及び各言語での展開は基本的にgumiの世界中の拠点に任せていること、ローカライズの内容などにもあまり干渉せず好きなようにやらせていることが1年間という短い期間で54カ国に展開出来た秘訣だと述べた。

 キャンディクラッシュを展開するKingの日本代表、枝廣氏はスマートフォンのカジュアルゲームが全世界的に成長していることを説明し、ダウンロード数が全世界的に急上昇していると解説した。Kingは各国に各タイトルの開発チームが分散しており、北米やアジアだけではなくヨーロッパの開発拠点とも常にコミュニケーションが必要となり、「時差を考えると常に誰かと話をしている状況で追いつくのが大変」とプレゼンテーション後に笑いながらコメントした。

 最後に登壇した5Rocksのカントリーマネージャー、佐藤氏は売上やダウンロード数だけではなくアプリ内でユーザーがどう動いているのか、離脱を防ぐための考え方を既に5Rocksの顧客のデータを元に解説。単に何時ダウンロードされたのかという情報だけではなくゲーム内のレベルや課金の有無などからユーザーの行動を詳しく分析し、手当をすることが大事であると解説。

 特にあるユーザーがどのくらいの頻度でゲームをプレイしているのかという数値と最後にログインした日からどのくらいの時間が経過しているかによって離脱のリスクを計算する分析方法を紹介し、この離脱リスクを注視しながら離脱を低減することが必要と説明した。

RiskMetrics_5Rocks
離脱リスクを表現したグラフ。課金と無課金ユーザーの違いが見える。

 これまで自社のコンテンツの分析しか出来なかった5Rocksのソリューションだが、これからは他のゲームコンテンツの状況を横目に見つつ、自社コンテンツのテコ入れをする、という方法が取れるようになりそうだ。ちなみに他社コンテンツのデータはあくまでも匿名化されており、タイトル名を確認することは出来ないようだ。全体の傾向を見た上で自社コンテンツの対策が可能になるということらしい。あくまでも参考情報ということなのでこの件についてはいずれ正式に発表があるだろう。

 既にスマートフォンのゲームが新しいゲームコンテンツの主戦場となっている今、面白いゲーム、楽しいユーザー体験を作るという感性の部分と如何に冷静にデータを分析して対策を打つか、というデータ分析の部分、つまり文系の視点と理系の視点がうまく噛み合わないとそもそもゲームビジネスそのものが成り立たない状況だ。

 ヤフーによるFlurry Mobileの買収でわかるようにスマートフォンアプリの分析と広告はこれからのアプリビジネスを支える大きな流れとなるだろう。
http://ascii.jp/elem/000/000/917/917698/

週刊アスキー最新号

編集部のお勧め

ASCII倶楽部

ASCII.jp Focus

MITテクノロジーレビュー

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード
ピックアップ

デジタル用語辞典

ASCII.jp RSS2.0 配信中