冷夏になるとの予報から一転、日本列島を猛暑が襲い始め、今年も節電が強く求められる夏が訪れた。企業にとって節電はとかく事業活動の足かせとなりかねない。しかし一方では、節電を積極的に推し進めることで大きなメリットを得ようとする動きも見られる。デマンドレスポンスだ。
電力需給は通常、需要量の変化に合わせて供給側が電力供給量を調整することでバランスがとられてきた。この調整役を逆転させるのがデマンドレスポンス。限られた供給量に合わせて、供給量の上限を超えないように需要側が電力需要量を抑制する。需要量の抑制に協力したみかえりとして、供給側が需要側に対価を支払うことで、事業として成り立たせる。
デマンドレスポンス事業には、供給側(電力会社等)と需要側(電力を消費する企業等)の間にアグリゲーターと呼ばれる事業者が介入する。アグリゲーターの意味は集める人。アグリゲーターは供給側とデマンドレスポンス事業の契約を結び、需要側から協力者を募る。そして、供給側から節電の要望があった際、要望のあった日時に節電に協力するよう需要側の協力者に依頼する。
たとえば、楽天グループの楽天エナジーは、東京電力、関西電力、九州電力の管内でデマンドレスポンス事業を展開。節電に協力した事業者に対して対価を支払うほか、仮にその節電協力事業者が宿泊施設だった場合、「電気にやさしいエコ宿」として紹介することで集客をサポートするなど、楽天グループの他の事業とのシナジー効果を利用してプラスアルファの価値を提供。節電協力事業者の獲得に努めている。
2013年度は、東京電力管内でグローバルエンジニアリングをアグリゲーターとして115軒、7万6050kW、関西電力管内で洸陽電機をアグリゲーターとして7軒、800kW、九州電力管内ではグローバルエンジニアリングをアグリゲーターとして6軒、170kWの節電実績を残した。14年度はさらなる実績の向上を目指している。
賢い企業は節電で儲ける――デマンドレスポンスが夏の企業活動としてクールビズを追い越すのはそう遠い日のことではなさそうだ。