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クラウド、フラッシュ、Software-Defined Storageについて聞いた

ネットアップはストレージの3大トレンドをどう考えている?

2014年08月06日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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ストレージの分野で今旬なトピックと言えば、ハイブリッドクラウド、オールフラッシュアレイ、Software-Defined Storageの3つであろう。米ネットアップ 製品/ソリューション マーケティング担当副社長のブレンドン・ハウ氏に、3つの分野での戦略について聞いてみた。(インタビュアー TECH.ASCII.jp 大谷イビサ)

ハイブリッドクラウドの形は1つじゃない

大谷:5月のイベントで、EMCは既存のオンプレミスのエンタープライズ市場はいまだに非常に大きいというスライドを改めて出してきました。クラウド対応を進めているネットアップとしては、既存のオンプレミスとハイブリッドクラウドのニーズはどのように変化すると考えているのでしょうか?

米ネットアップ 製品/ソリューション マーケティング担当副社長 ブレンドン・ハウ氏

ブレンドン・ハウ氏(以下、ハウ氏):顧客によって、クラウドの定義がけっこう異なることに注意が必要だが、既存のオンプレミスとハイブリッドクラウドの分野は、実は重なっている。オンプレミスのVMware上で動かすエンタープライズアプリケーションは、今後もハイブリッドクラウドに移らないだろう。両者がいきなりひっくり返る証拠や確証は確かにない。オンプレミスのエンタープライズ市場はいまだに400億ドルの市場であり、見失ってはいけないと思っている。

お客様側としてもオンプレミスをクラウドに移すにあたって、セキュリティ、コンプライアンス、予測可能性などさまざまな課題がある。言葉としてはシンプルだが、CIOとしてビジネスを実行するには、これは大きな問題といえる。われわれは両者の橋渡しをできるのが大きな価値だ。そのため、両者の分野で成功し、マーケットシェアを伸ばしていく必要がある。

大谷:他社とのアプローチの違いは、この橋渡しをData ONTAPという単一のソフトウェアでやろうとしていることだと思います。この考え方は正しいでしょうか?

ハウ氏:正しい。Data ONTAPはコアのエンタープライズとハイブリッドクラウドで共通のデータ管理をできるようになっている。ここがしっかり管理できれば、お客様は透過的にデータを扱える。

大谷:製品として橋渡しはできるとはいえ、リセラーにとってはチャレンジです。オンプレミスの製品を売るのは得意なリセラーは多いかもしれないが、ハイブリッドクラウドでの製品を売るのは別のノウハウが必要です。ここらへんはどうしていくのでしょうか?

ハウ氏:ハイブリッドクラウドの形は1つではない。いろんなエコシステムやソリューションから構成されている。だが、結局、なにを売るのかで答えは変わってくる。

たとえば、VMwareやMicrosoftのハイブリッドクラウドを売るのは、今までのパートナー制度や営業ツールを使えばよい。でも、AWSと連携するハイブリッドクラウドとなると、売れるパートナーは一部かもしれない。AWSはセルフポータルなので、リセーラーが関わらないということすらあり得る。

ただ、初期のクラウドでも同じような課題があった。サービスプロバイダーがエンタープライズアプリケーションをサービスで提供し始めたので、われわれはそのサービスプロバイダーにいかに導入してもらうかが頭を悩ませていた。結果として、ここはうまくいったので、現在も同じ戦略を踏襲している。われわれはオンプレミス、ハイブリッドクラウドのそれぞれに戦略を持っており、お客様に選択肢を与えることを重視している。

オールフラッシュだけでなくアーカイブも進化させる

大谷:次にオールフラッシュアレイについて聞きたい。ネットアップは「EF540」のような製品を昨年から展開しているが、新ソフトウェアを搭載した「FlashRay」も開発中だ。この市場では、どの程度の成長を見込んでいるのか?

ハウ氏:オールフラッシュアレイの成長率は確かに高いが、市場自体が小さい。また、HDDとフラッシュの価格差は歴然と存在しており、いまだにフラッシュの方が7~8倍程度は高い。コンプライアンスの要件や、データの増大を考えると、ストレージの経済性はかつてないほど重視されている。現状、ハイブリッドの方が圧倒的に出荷量は多いし、オールフラッシュに一気に移行するとは考えていない。

大谷:フラッシュアレイの取り組みは各社で異なりますが、ネットアップはどれような戦略を持っていますか?

ハウ氏:ネットアップはすでにフラッシュのテクノロジーを製品に統合しており、移行もすぐできる。オールフラッシュは遅延に敏感なビジネスアプリケーションやVDIの分野に最適で、データのフットプリントを小さくすることができる。そしてわれわれはパフォーマンスと遅延と同じくらい、信頼性を重視している。

「フラッシュはあくまで重要な技術の1つという位置づけだ」(ハウ氏)

最新の数字では総出荷容量は93PBにおよび、おそらく業界最大になっている。スタートアップのベンダーのように存在意義を賭けるものではなく、フラッシュはあくまで重要な技術の1つという位置づけだ。

大谷:要件的にオールフラッシュアレイの真逆に位置するアーカイブやオブジェクトストレージの市場に関してはいかがでしょうか?

ハウ氏:市場的に伸びていくと考えている。テープは死に絶えると言われながら、いまだに生き延びている。これはめったにアクセスしないデータの保存というニーズに対して、魅力的な価格を提示できているからだ。

ネットアップでいえば、2009年に買収したバイキャスト(Bycast)のオブジェクトストレージをベースにした「NetApp StorageGRID」がこの用途にマッチする。インアクティブなデータをたまにアクセスするといった使い方に向いている。何十億のオブジェクトにも対応できるようにアーキテクチャを見直している。

ネットアップはどんなところとも組める

大谷:最後にSoftware-Defined Storageについて聞きたい。ネットアップは市場で言われているSoftware-Defined Storageの概念は、すでにData ONTAPで実現済みというスタンスだが、そもそもSoftware-Defined Storageをどう定義していますか?

ハウ氏:まずは共通のリソースプールからアプリケーションサービスにあわせたリソースをプロビジョニングする能力だ。ストレージであれば、性能や容量、セキュリティ、さまざまなカスタマイズを調達することになる。また、ソフトウェアの要件に応じて、デプロイメントの選択肢があるという点、さらにデータセンターやスタックに統合し、大きなエコシステムの一部として扱えるという点もSoftware-Defined Storageの能力だと思う。

「Software-Defined Storageの分野ではネットアップは他社に比べて先行している」(ハウ氏)

この分野では、ネットアップは他社に比べてかなり先行している。Data ONTAPではリソースプールから要件に応じたSVM(Storage Virtual Machine)を切り出すことができる。また、clustered Data ONTAPはエントリからハイエンドまで動作するし、FlexArrayの機能を使えば、FAS以外のプラットフォームでも利用できる。AWS上でも使えるし、スタンドアロンのソフトウェアでも使える。

大谷:確かにハードウェアに依存しないという点は、ユニークだと思います。

ハウ氏:Software-Definedの概念を考える時、ほとんど議論でハードウェアの重要性を忘れている。ソフトウェアで制御するわけだから、どんなプラットフォームを使っても、できることは同じと考えがちだ。しかし、Software-Defined Storageではあくまでデプロイメントの選択肢が拡がるべきだと考える。高いHAの可用性がほしい場合も、不要な場合も同じソフトウェアの機能が使えるべきだと思う。

また、今やData ONTAPはさまざまなクラウドと連携する。別に専有型のストレージがソフトウェア化するという話ではなく、顧客にとって選択肢が増えるということだ。

大谷:このように市場環境が大きく変わっていく中、御社の競合ベンダーは変わってきているのではないか? エンタープライズベンダーの中には、AWS(Amazon Web Services)をライバル視しているベンダーもあるが。

ハウ氏:原則的にストレージという分野では、大手のストレージベンダーは引き続いて有力なライバルだ。AWSを競合と据えた場合、われわれは彼らより優れたクラウドサービスを提供する必要があるが、正直それは難しいだろう。AWSが活躍している分野であえて戦うというのは戦略上は失敗だと思う。

すでに彼らはエコシステムを変えるパワーを持ちつつある。そんな相手に対して、ときに競合しつつ、ときに協業する関係にあるのが、われわれのスタンスだ。どんなところともパートナーシップを組めるのは、ネットアップの競争優位点だ。

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