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アドビ初のPan-CJKはどのようにして生まれたのか

「源ノ角ゴシック」を実現させたアドビ西塚氏の勘と感覚

2014年07月29日 10時00分更新

文● 貝塚怜/ASCII.jp編集部

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源ノ角ゴシック(Normal)で縦書きの文書を印刷してみた。紙でも視認性がよく感じる

「ノを入れれば日本語感が出るんじゃないかな?」

—— 源ノ角ゴシック(ゲンノカクゴシック)という名前もどことなく人名のようで、荘厳な雰囲気がありますね。

 「この名前を決めるのも大変だったんです。日本だけの話だったら、『日本人が良い感じに思う響きの言葉』を探して、商標がとれてしまえばいいので……それもそれで大変なんですけど、そこまで大変でもないんですよ。

 ところが今回は、日中韓の各国が『これはよし!』って思える言葉を探す必要があって。始めは、Source Han Sansの『Han』が挟まるのは、私たちとしては違和感があったんです。

 Hanは『漢』で漢字の意味なんですけど、日本人が『ハン』という音をきくと、『チンギス・ハン』のイメージが強くて……もちろん悪いということではないんですけど、チンギス・ハンをすぐに連想してしまうのはどうか、ということになり」

—— うーん! そこにもまた大きな苦労が。

 「そうなんです。あとは、『Source Gothic(ソース・ゴシック)にしようか』っていう話もあって、『いや、ソースはSourceじゃなくて絶対ペヤングの方だと思っちゃうよ〜』ってなって(笑)。

 『ペヤング・ゴシック』とかって言われちゃうんじゃないかって(笑)。それはそれで、もしかしたら愛称としてはいいのかもしれないんですけどね」

—— 「ソース・ゴシック」だったら瞬時に「ウスターソース」「中濃ソース」の方が浮かびますね(笑)

 「そう(笑)、それで、他にも『Cloud』という言葉を使ったらどうかとか……あとは、私の名前の『涼/Ryo/りょう』を使ってみてはどうかとか、そしたら『りょう』という響きは中国では冷たいイメージがあるらしく、『中国的にはダメだよ』となって……そんな感じでなかなか決断ができなくて、その内、米国のチームも困ってきてしまったんです。

 そして最終的には、Source Han Sansという英名はそのままに、Sourceを意味する『源』っていう漢字を使って、日本名、韓国名(본고딕)、中国・香港・台湾名(簡体字で「思源黑体」、繁体字で「思源黑體」)と名称を分けることにしたんですね」

—— それで、各国で名前が違っているんですね。

 「はい。そこからまた、源を『みなもと』と読んで『源角(みなもとかく)ゴシック』と考えたんですけど、商標の問題でダメで。じゃあ、『げん』と読んでみてはどうか、『でも源角(げんかく)ゴシックはちょっと重たいよね』となって」

—— そして「ノ」が入ったというわけですか!

 「はい。たとえば中国では思源という言葉にしたんですけど、そんな風に、あえて各国で名前を変えるなら、日本の文字を入れてみようということになり。『ノを入れれば日本語感が出るんじゃないかな?』ってなったんです。ジブリメソッドというか、『風の谷“の”』みたいな(笑)」

—— 源ノ角ゴシックって素敵な名前だと思います。

 「ありがとうございます。発表のときは、友人にも『なんでこんな名前なの?』って言われたりしたんですけど、少し経った今では、結構親しみを込めて、Source Han Sansじゃなくて、源ノ角ゴシックって呼んでくれている人も多いみたいですね。

 米国のチームには、びっくりされたりもしたんですけどね。『えっ!? 何なの? その名前は!』みたいに(笑)。でも、私たちは気に入っているんです。ノを挟むっていうのは、ちょっと新しいんじゃないかな?」

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