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百貨店だってコンテンツがほしい!

2014年07月25日 07時00分更新

北島幹雄(Mikio Kitashima)/アスキークラウド編集部

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「AKBとPEACH JOHN、タレントの肌着CMがPVの1位で、2位は銀座三越のおみやげの日があった。第3位はうちの独占情報だったヨウジ・ヤマモトのイベント。この1位から3位までのPVのバランスに安心した。ディープなところが残っていてくれた」と、ファッションヘッドライン代表取締役の田沼和俊氏は語る。

 ファッションヘッドラインは、日本の最新ファッション文化を配信するニュースメディアだ。運営元である株式会社ファッションヘッドラインは、三越伊勢丹ホールディングスとイードによる合弁会社。百貨店にはなかった新たな媒体として、2012年12月にサービスを開始した。

ファッションヘッドライン

ECではなく、ニュースサイトでビジネスをする真意

「ウェブメディアのビジネスで成功する会社、その生き残りプロセスに興味があった。仮説検証をコンサルタントに依頼するのではなく、百貨店とは別の実体験プロセスを吸収するために合弁でのニュースサイトを作った。三越伊勢丹は、品質を担保する企業・ブランドなので失敗は許されない。信頼を落とさないようにする面でも、見方が違った」と田沼氏は語る。

 百貨店経営という長い歴史で見れば、価格と価値のバランス、顧客対応力、という点は十分に育っていたが、ITの面では置き去りの状態だった。プライスパフォーマンスや専門性を武器にしたショッピングモールやファッションビルの台頭によって、百貨店の市場は縮小傾向にある。新聞やテレビといったオールドメディア同様に、時代の変化によって百貨店経営も岐路に立たされている。


百貨店というプラットホームとコンテンツの融合バランス

 合弁企業によるスタートを切ったニュース配信事業でのKPIは、24カ月後までの単月黒字で、ぎりぎりの達成を見込む。「3月末の段階で300万PV、85万UU。UUは自信をもって言える。計画どおりにPVは推移している。そもそも2年間は我慢してくださいと、最初にイード側から伝えられていた。メディアをやるときに、我々はコンテンツをもっているという意識だったが、イード側はメディア=テクノロジーだった。これが両輪になった」

 ニュースメディアの収益は、新聞のような課金モデルができなければ、一般的には利用者数を伸ばす形でのバナー広告収入が主となる。イード側からは当たり前のグーグルアドセンス導入という提案も、当初三越伊勢丹サイドはやりたくなかったという。

「百貨店ならデザイン面でかっこいいところ、VOGUEのようなデザインを求められることが多い。だが、ウェブでは違う。ファッションでいうとニッチなのだが、三越伊勢丹からするとブランドをどこまで守るか、というところがあった。広告をペタペタとは貼れない」

 だが、広告を導入したことで収入面は安定。ディープな記事で攻め、業界ウケに重きを置いて始まった1年目から、現在は読者層を広げる形でサイトの幅はゆるめられている。だからといって、ブランド価値自体が損なわれたわけではない。本記事冒頭の田沼取締役の発言は、プラットホームとコンテンツの融合についての自信の表れでもある。

 三越伊勢丹は、ただ宣伝するための新しいメディアがほしかったのではない。自社発信のプレーンなニュースを送るだけではない、利用者にマッチしたコンテンツ提供こそが目的だ。百貨店プラットホームに融合したコンテンツの正解の1つが、ニュースサイトにあった。

 今やリアル店舗やECサイトだけでは、顧客に向き合うスピードは追いつけない。「オムニチャネル」という言葉は米国の百貨店であるメイシーズから始まった。実店舗である百貨店のブランディング強化と、ECビジネスと実店舗での小売へのさらなる影響力のさらなる発揮が期待される。

 アスキークラウド本誌9月号の特集「ディズニーvs.KADOKAWA×ドワンゴ」では、百貨店同様に旧来のコンテンツであるTVと新聞、出版業界の変容も取り上げている。


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