デスクトップはどうなる?
IBMとの提携により前途洋々たるAppleの企業向けモバイルプラットフォーム(iPad/iPhone)だが、気になるのは“デスクトップ”の行方だ。具体的にはMac、そしてOS Xがどうなるか。「iOSデバイスが伸長すれば相対的に地盤沈下が進むのでは?」。そう懸念しているMacユーザーは多いはずだ。
Macの今後について云々する前に、Appleのビジネスモデルについて確認しておきたい。AppleはUIやデザインを含めた広義のソフトウェアに一家言ある企業で、ソフトウェアがAppleのアイデンティティではあるが、利益の大半はハードウェアによるものだ。決算の数値を引くまでもなく、膨大なコストをかけて開発しているiOSやOS Xが無償配布されている事実を見れば明らかだ。1台あたりの単価は低くても、デスクトップより成長性があり多くの台数を見込めるモバイルデバイスを重視するのは当然だろう。
ソフトウェア(OS X)開発体制の変化もそうだ。OS X Tiger(v10.4)あたりを境目に、Appleのソフトウェア開発の力点はiOSにシフトしており、実際OS X Leopard(v10.5)のリリースはiPhoneへの注力を理由に4ヵ月延期された。
とはいえ、Macがなくなることはない。かつて故Jobs CEOがインタビューの場で、「モバイルデバイスが一般消費者向けの乗用車としたらデスクトップ機はトラック」という趣旨の発言をしていたが、Macはまさに後者だ。将来はわからないが、少なくとも現状ではアプリ開発にはMacのパワーと環境(OS X)が必要になる(新言語の「Swift」も生まれたばかりだ)。iPhone/iPadが伸びれば母艦としてのMacの存在感は増す、ということもあるだろう。
ハードウェアとしての市場規模はiPhone/iPadほど見込めないかもしれないが、ビジネスとしてのMacは手堅い存在だ。たとえば、MacBook AirとMacBook Pro。ここ数年デザインに大きな変化がないという事実からは、フォームファクタを長持ちさせることで利益率を高めようとする戦術が見え隠れする。しっかり“儲ける”ことでビジネスとして続けたい、ということだ。
だから、IBMとのモバイルデバイスを巡る提携話は、Appleのデスクトップ戦略を変えることはない。従来の計画どおり開発フレームワークの整理統合を進め、iOSとOS Xの融合(筆者は「融合」を開発環境の一本化という文脈で理解している)を進めることだろうが、Macは残り続ける。Macがなくなるとしたら、それはAppleがソフトウェア開発部門を廃止する日だろう。
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