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Apple Geeks 第150回

IBMとの提携でどうなる? Appleのデスクトップ戦略

2014年07月19日 11時00分更新

文● 海上忍(@u_shinobu

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 本連載「Apple Geeks」は、Apple製ハードウェア/ソフトウェア、またこれらの中核をなすOS X/iOSに関する解説を、余すことなくお贈りする連載です(連載目次はこちら)。

 UNIX使い向けを始め、Apple関連テクノロジー情報を知りつくしたいユーザーに役立つ情報を提供します。

"Out of the (BIG) blue"な提携話

 AppleとIBMが企業向けモバイルサービスで提携する(関連記事)。

突然発表されたIBMとの提携。しかし、考えてみれば両社のメリットは多く、周到に計算された結果だとわかる

 かつてはPCなどパーソナルユースのデバイスを多数擁していたIBMだが、大型汎用機など一部を残しハードウェア部門から次々撤退、2013年の売上に占めるハード部門の割合は十数パーセントにまで低下している。現在では「IBM BlueMix」などクラウドに注力し、サービスを柱とする企業に変貌していることは周知のとおりだ。

 一方Appleは、iPhoneやiPadなど企業にも受け入れられるハードとソフトを擁しつつも、建前はあくまで「パーソナル」。エンタープライズ分野も手がけているものの営業力は十分といえず、クラウドサービス「iCloud」は企業向けというにはカスタマイズ性・柔軟性に乏しく、アプリの配布やデバイスの一元管理にも多くの課題を抱えている。

 IBMとの提携は、両社の得意分野を生かしつつ苦手な部分を補完しあえるという意味で、少なくとも現時点においてはこれ以上ない組み合わせといえるだろう。実際、Wall Street Journalが両社のCEOにインタビューした記事によれば、これ以上に補完しうる関係の会社は他にない旨コメントしている。

IBMのVirginia Rometty社長とAppleのTim Cook CEO

 日本国内におけるiPadの導入事例を見ると、大塚商会やソフトバンクBBなど一部SIerが積極的に実績を積み上げてはいるが、いわゆる大企業向けの販売チャネルが確立されているとは言い難い。たとえば金融機関向けの実績を聞くと(関連リンク/PDF)、会社の数や従業員数に見合った規模ではなく、試験的・実験的段階だ。重厚長大企業も含めれば、市場開拓余地はまだまだある。

 米国にしても、フォーチュン500企業の90%以上がiOSデバイスを導入済みとAppleはいうが、IBMとの提携に踏み切った背景には"まだ台数は伸びる"という目算があったに違いない。IBMとの協業と聞けば、古くからのAppleユーザーはPowerPCやCHRP、あるいはTaligent、OpenDocを思い出してしまうものだが、時代は流れた。モバイルデバイスを核としたサービス拡充を目指す両社の取り組みと今後の展開に注目したい。

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