モバイル開発者やエンタープライズ向けのサービスをまとめる
AWSがエンドユーザーコンピューティングに本気で攻めてきた
2014年07月22日 09時00分更新
7月17・18日に開催された「AWS Summit Tokyo 2014」で特に注目したいのは、AWSのエンドユーザーコンピューティング分野への進出だ。インフラ分野での圧倒的な実績を元に、モバイル開発者向けサービスや、VDIやファイル共有などさまざまなサービスを拡充している。
モバイルファーストに対応する開発者を支援
初日にAmazon CTOのワーナー・ボゲルス氏の基調講演では、「AWS is everywhere」というキーフレーズと共に、この数週間で新サービスが次々投入されているモバイル分野への取り組みがアピールされた。
ボゲルズ氏の「開発、ビジネスの分野では明らかにモバイルファーストになっている」というコメントと共に紹介されたのが、第64回の紅白歌合戦のモバイルアプリのAWS事例。これは生放送と連動して、出演歌手や楽曲情報を表示するセカンドスクリーンをWebブラウザやモバイルデバイスに提供するシステムで、AWSのサービスやツールを数多く組み合わせることで実現されている。ボゲルズ氏は「AWSでリッチなバックエンドを作ることで、開発者は高い信頼性を持ったマルチデバイス対応のモバイルアプリを簡単に提供できる」とアピールした。

紅白歌合戦のセカンドスクリーンの事例を紹介
こうした開発者向けのモバイル分野への取り組みとして、ボゲルズ氏が紹介したのが7月10日に発表されたばかりの「Amazon Cognito(コグニート)」だ。Amazon Cognitoでは異なるデバイス間で同じアプリケーションを利用する場合に、安全にデータのバージョンを一致・同期させるよう、ユーザーのログイン情報を管理するサービス。「もちろんユーザーデータにおいても、強力な暗号化がかかっており、開発者しかアクセスできないようになっている」とボゲルズ氏は語る。

ユーザーIDとデータの同期に関わる複雑な処理を実現するAmazon Congnito
また、「Amazon Mobile Analytics」では、モバイルアプリの利用データを収集・視覚化するサービス。数百万人のユーザーからセッションから発生する数十億件のイベントを収集し、アクティブユーザーやセッション、リテンション、アプリの売上高、カスタムイベントなどに関するレポートを生成するという。さらに、iOS、Android、FireOSをサポートした「AWS Mobile SDK」は、AWSのモバイルサービスに容易にアクセスすることが可能になっている。

モバイル開発者向けのAmazon Mobile Analytics」。「Amazonはデータを利用・売却しない」の文言も
VDIもファイル共有もフルマネージド型で
エンタープライズ向けの取り組みとしては、昨年発表された「Amazon WorkSpaces」が紹介された。もとよりVDIのインフラをAWS上に構築することが可能だが、OSやソフトウェアのインストール、バックアップ、HA、スケール化などはきちんと設計・構築する必要がある。ボゲルズ氏は「CIOと話をしていると、VDIやBYODの分野で課題を抱えていることが多い。大規模環境で(デバイスを)管理するのは大変だし、複数のデータセンターにあるVDIインフラの可用性やパフォーマンスを担保するのは難しい」と指摘する。
これに対してAmazon WorkSpacesはこのVDIのインフラをフルマネージド型で提供する。標準的な構成であれば、エンドユーザーはおおむね20分でVDIが利用できるという。企業内のディレクトリサービスとの連携も可能だ。

プラットフォームサービスでモバイル向けを強化。エンタープライズ向けにVDIを強化
そして、最新のサービスとして披露されたのが、完全マネージド型の企業ストレージ・共有サービス「Amazon Zocalo(ゾカロ)」だ。これはマルチデバイスでドキュメントを共有できる企業向けのサービスで、ドキュメントやスプレッドシート、プレゼンテーション、Webページ、画像、PDF、テキストなどのファイルを簡単に共有できるほか、ドキュメント内のフィードバックを残すことが可能だ。前述したAmazon WorkSpacesとも統合されており、WorkSpacesのユーザーはZocaloを50GBまで無料で利用できるという。現状は限定プレビューだが、昨今隆盛のクラウド型ファイル共有サービスと真っ向で当たるサービスになるため、今後利用の動向が注目される。
IBMとアップルの提携で、ますます業界的に注目を集めている“モバイルファースト”の分野だが、クラウドやビッグデータなどの分野に比べ、各プレイヤーごとにアプローチが異なるのが特徴だ。こうした中、AWSは実績を持つインフラ系サービスと同じく、フルマネージドの使いやすさとサービスのきめ細かさで他社と対抗していくことになりそうだ。

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