動画コンテンツプロバイダの動向
では、映画会社など動画コンテンツのプロバイダは諸手を挙げてストリーミングを指向するかというと、必ずしもそうではない。家電メーカーを中心としつつ映画会社の発言力が強いBlu-ray Disc Association(BDA)の動向をたずねると、次世代Blu-rayディスク(UHD Blu-ray)の規格として4K(Ultra HD)対応を進める一方、HDDやメモリカードに回数限定でコピーを許す「ブリッジ」(BD Bridge、仮称)と呼ばれる機構を検討しているという。
映画会社がディスクを重視するのも当然だ。発売から日が浅い「パシフィック・リム」を例にディスク版(Blu-ray)とダウンロード版(iTunes Store)を比較すると、明らかに得られる「エクスペリエンス」が違う(表1)。映像こそ同じ1080pだが、音の迫力にせよ3D版の有無にせよディスク版のほうが上だ。制作者が意図したとおりの映像と音を体験してほしい映画会社としては、オンデマンドで買えて物理的な場所をとらないことを評価する消費者が多いことを承知しつつも、求める品質・機能に近いディスク版に期待をつなぐのも無理はない。
表1:「パシフィック・リム」の ダウンロード版とBlu-ray版の比較 |
||
---|---|---|
種別 | iTunes Store(ダウンロード) | Blu-ray |
解像度 | 1080p | 1080p |
Dolby Digital(5.1ch) | ○ | ○ |
DTS-HD Master Audio | × | ○(5.1ch) |
3D版 | × | △(別の商品) |
日本語吹き替え | △(別の商品) | ○ |
価格 | 2500円(HD版) | 1490円 (アマゾン、7月11日時点のオンライン価格) |
iTunes Storeに利便性で勝る「MovieNEX」
iTunes Store以外のサービスも含め、ディズニーが既存の動画配信サービスに満足していないのでは、という気配は以前からあった。同社は2013年秋以来、Blu-rayとDVD、映像ファイルのネット再生権をパッケージ化した「MovieNEX」(ムービーネックス)を展開している。一度購入すれば好きな場所・好きな環境で視聴できるため、ユーザーにとってiTunes Storeのダウンロード版より使い勝手に勝る場面が多い。前述した次世代Blu-rayの「ブリッジ」を含め、ディズニーの目指す方向がうかがえようというものだ。
この連載の記事
-
第187回
iPhone
NFCの世界を一変させる!? iOS 11「Core NFC」の提供開始が意味するもの -
第186回
iPhone
Appleと「4K HDR」 - iOS 11で写真/動画を変える「HEIF」と「HEVC」 -
第185回
iPhone
iPhone 7搭載の「A10 Fusion」「W1」は何を変えるか -
第184回
iPhone
オープンソース化された「PowerShell」をMacで使う -
第183回
iPhone
アップル製デバイス連携の鍵、「Continuity」とは? -
第182回
iPhone
DCI-P3準拠へと歩むiPhone/iPad - WWDC基調講演で秘められた新技術は、ここにある(2) -
第181回
iPhone
WWDC基調講演で秘められた新技術は、ここにある(1) -
第180回
iPhone
WWDC直前、買い替え前にマイMacのココをチェック -
第179回
iPhone
私がiTunesを使わなくなった5つの理由 -
第178回
iPhone
今あえてiPhone「Live Photos」を知る -
第177回
iPhone
「Windows Subsystem for Linux」はOS Xのライバルとなるか? - この連載の一覧へ