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データ消失事故から2年!ファーストサーバ、再生への第一歩 第2回

会社ぐるみで取り組んだGAP分析、ヒヤリハットなどの施策を聞く

信頼を失ったファーストサーバが挑んだ事故調査と再発防止

2014年07月25日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

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約600件におよんだヒヤリハット

 また、リスクマネジメント委員会が、リスク管理を強化するためにGAP分析ととともに実施したのが、「ヒヤリハット」だ。これは全従業員を対象に身近なリスクをヒアリングし、「影響度」「緊急度」により、優先度を決定し、対策を実施するもの。2012年に実施した結果、人間関係のリスク、設備的なリスクまで含めて600件近くが挙がったという。

同社が進めたリスク対策のまとめ

社長室村竹:上長を介さず、直接声を聞ける取り組みをしてこなかったのですごく有効でした。特に業務を請け負っていただいている外部社員の方の視点がよかった。外部社員の方はルールをきちんと守ろうとしてくださっているのですけど、現場ではなかなか難しいといった視点が新鮮でした。

開発担当藤原:大きな事故のあとで、再発防止のような後処理的な作業が多かった中で、積極的な声が数多く挙がったのがよかった。部署のレベルでは見えないけど、個人の心の奥底までたどり着けば、けっこうみんな熱かったりする。正直自分の中にも、事故のあとだから、しょうがなくやるみたいな意識があったが、600件のコメントを読んだら、これはやらなきゃ行けないという意識に変わりました。

「600件のコメントを読んだら、これはやらなきゃ行けないという意識に変わった」(藤原氏)

 各人はどういった意見を出したのだろうか? マーケティング担当の岩崎文美氏(現マーケティングコミュニケーション部 マーケティングコミュニケーショングループ 課長 以下、マーケティンング担当岩崎)や運用担当の松本氏に聞いた。

マーケティング担当岩崎:お客様向けのサポートWebが消えてしまい、情報発信の手だてがなくなってしまったのが大きかったので、情報発信に関しても冗長化したほうがよいと出しました。

運用担当松本:出して長いサービスの場合、お客様の使い方が変わってリソースが足りなくなってきたとか、顕在化していないけど、設備の陳腐化する危険性があるといったことを提出しました。

 リスクマネジメント委員会に収集されたこれらの情報は、カテゴリ分けしたあとに、優先順位を付け、高いモノから施策に移された。1回目は重要な箇所が単一障害点になっているとか、社内のアカウント管理が十分ではないといった問題に向けて取り組みを行なった。

原点に立ち返って会社を変えなければならない

 さらに、ISMSへの取り組みも見直すことにした。同社ではもとよりISMSの事件・事故報告制度に則り、事故について情報を公開していたが、サーバーサービスに影響のある事象のみを「事故」とみなしていた。そのため、どちらかというと規定を守ること、審査に落ちないことを重視しており、形骸化されていたという。しかし、事故後はISMSにおける事件・事故報告制度での評価基準を見直し、安全にサービスを提供するために従うよう意識を変えた。

運用担当松本:たとえば、ハードウェアが故障して停止していたのは、内部ではもちろんインシデントとして扱うのですが、それ自体は事故としてはみなしていなかった。それを今後は、サービス停止が起こったモノすべてを事故として取り上げ、軽微な障害に関しても、「失敗」として扱うようにした。これら失敗をまとまった段階で、リスクマネジメント委員会に上げ、改善対象にしてもらいました。

 このようにレンタルサーバー事業者にとって、長年培ってきた開発や運用のプロセスを変えるというのは、ビジネスの根幹を変えるに等しい変革だ。しかし、今回の事故は今まで信じてきた常識や培ってきたこだわりを一気に覆すようなインパクトがあった。

「もう一度原点に立ち返って、会社を変えた方がよいと思いました」岩崎氏

マーケティング担当岩崎:設立から18年間くらい経って、表面上変わったことは何回かあったんですけど、今回の事故を契機に、もう一度原点に立ち返って、会社を変えた方がよいと思いました。どれか1つがとても悪いという会社ではないし、昔ながらのいいところもいっぱいある。ただ、技術も新しくなり、人もどんどん入っていく中で、昔ながらのいいところと今の技術や動向を、本気で融合させるようにしないと、長く事業を続けていけないと思いました。

 第3回に続く。

edge

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